2003年度より,高等学校三年生の選択者を対象に,学校設定科目『生命論』を開講している。
本発表は,生物の教員と私(倫理)の2名で担当している『生命論』に関する実践報告である。

 生命科学の急速な進歩により,生殖医療や臓器移植,脳死,終末期医療などの知識だけでなく,生命の質に関する倫理的問題は避けて通れない現状にある。これらの問題は科学者や医療従事者だけでたく一般市民にも判断が求められている。しかし,これらのことは,高等学校の授業の中では,
@ 多数の教科にまたがること
A 多角的で高度な基礎知識が必要なこと
B 解答が明確で画一的でなく難しい
そのためほとんど扱われていないのが現状である。

 そこで,各自の生命観の形成を目指すことを目標に,以下の手順で授業を展曲している。
 1) 講義や実験観察を通して,基礎的知識や考え方を学習する。
 2) 課題を設定することで,生徒達が自分の間題としてこれを捉えさせる。
 3) 互いの議論を通して,様々な視点や立場の違いを理解させる。
 またこれらの過程で,多方面の専門家による支援は,必要不可欠であり,またより思考を深める一助となるため,医療従事者(産婦人科医師・看護師)・倫理学者(生命倫理)を招き,講義や議論に参加いただいている。

 具体的には,第一期と第二期に分け,第一期ではより身近糸問題として「人工妊娠中絶」を共通のテーマとして提示し,生命を考える上でのさまざまな知識や視点を,習得させる一方,各自の生命観を見っめ直させ,他者との議論の重要性を認識させる。第二期では、第一期で習得した様々な視点をもとに,「死」を共通のテーマとLて取り上げ,@「安楽死・尊厳死をめぐって」,A「脳死と臓器移植」,「末期医療とケアのありかた」というテーマを各自の希望により選択し,より少人数のグループで議論しながら,その問題について考えを深め,各自の生命観の育成を目指した。極カ自分たちで必要な資料などを見つけ考える形態をとり、同時に専門的な知識も必要となるため,立場が異なる講師を招いて示唆をいただくことでより発展的なものになると考えた。
 授業形態は,基本的な知識を意見交流を交えながら提示したうえで、できるだけ生徒相互の議論に多く時間を確保した。教員も加わることで様々な視点や立場の違いを明確化させ,議論が活性化するように配慮した。さらに担当している2名の教員は,常に授業に参加し,互いに自分の価値観に基づいた発言を行ってきた。そのため,両者での意見の相違が明らかになる場面もあり,生徒達にはとても新鮮に感じたようである。

 『生命論』の設立経緯とその目的,実践形態,生徒の反応,今後の課題などについて報告する予定である。
 

学校設定科目『生命論』の実践授業

−生物・倫理の教師による取り組み−


大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎   堀 一人