中学校のときに,炭酸水素ナトリウムの熱分解の実験を行っているはずですが,覚えていますか。生成物は炭酸ナトリウムと水と二酸化炭素ですね。ところで,熱分解の生成物である炭酸ナトリウムNa2CO3と反応物である炭酸水素ナトリウムNaHCO3は,ともに白色の粉末ですね。どのようにして,区別しましたか?水に対する溶解性と,水溶液の液性ですね。水溶液の液性といっても,ともに塩基性です。しかし,フェノールフタレイン溶液を加えたときの色は,炭酸水素ナトリウム水溶液はうすい赤色,炭酸ナトリウムは濃い赤色です。この色の違いで区別したのでしたね。ところで,炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムは塩です。これも中学校で勉強したことですが,中和によって塩ができると覚えていませんか。そして,中和とは,酸性の性質とアルカリの性質を互いに打ち消す反応であると。 今日は,塩が水と反応すると,酸性や塩基性を示すことがあることを学びます。どうも,この内容は高校生に理解しにくいようです。もしかすると,中学校の学習が,もしくはそのときの記憶が,塩の加水分解に対して拒絶反応を示しているのかもしれません。まず,実験を行って,事実を確認して下さい。 ![]() |
実験14 塩の水溶液の性質 <塩の加水分解> 1−1.表中の塩(1)〜(7)をそれぞれ小さじ1杯ずつ試験管に取り,水道水3ml を加えて溶かす。 1−2.ガラス棒を用いて(1)〜(7)の水溶液を万能pH試験紙につけ,各水溶液のpHを調べる。 1−3.BTB溶液を1〜2滴ずつ(1)〜(7)の水溶液に加える。
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それでは,実験結果を確認しましょう。
硫酸アルミニウムAl2(SO4)3は強酸と弱塩基からできた塩です。加水分解すると,酸性を示していますね。塩化アンモニウムNH4Clも強酸と弱塩基からできた塩です。加水分解すると,弱いですが酸性を示しています。 塩化ナトリウムNaClは強酸と強塩基からできた塩です。水溶液は中性ですね。 酢酸ナトリウムCH3COONaは弱酸と強塩基からできた塩です。加水分解すると,塩基性を示していますね。炭酸ナトリウムNa2CO3も弱酸と強塩基からできた塩です。加水分解すると,塩基性を示しています。炭酸水素ナトリウムNaHCO3も弱酸と強塩基からできた塩です。加水分解すると,弱いですが塩基性を示しています。 塩の加水分解によって水溶液が何性を示すか判断できますね。しかし,硫酸水素ナトリウムNaHSO4は強酸と強塩基からできた塩でが強い酸性を示しています。これは電離によって,水素イオンが放出されると考えた方がよいかもしれません。 ![]() 塩の加水分解では,水が酸としてはたらいたり,塩基としてはたらいています。ブレンステッド・ローリーの酸・塩基の考え方です。では,水の代わりに,もっと強力な酸や塩基をはたらかせると,どのようなことが起こるのでしょうか。 |
<塩と酸・塩基の反応> 2−1.試験管に炭酸ナトリウムNa2CO3を小さじ1杯取り,蒸留水2ml 加えて溶かす。 2−2.1の試験管に硫酸H2SO42ml を加え,発生する気体のにおいを調べる。また,湿らせた万能pH試験紙を試験管の口に近づける。 2−3.試験管に塩化アンモニウムNH4Clを小さじ1杯取り,水酸化ナトリウム水溶液2ml を加え,発生する気体のにおいを調べる。また,湿らせた万能pH試験紙を試験管の口に近づける。
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実験結果を確認しましょう。
炭酸ナトリウムと硫酸の反応で発生した気体は二酸化炭素ですね。また,塩化アンモニウムと水酸化ナトリウムの反応で発生した気体はアンモニアです。 ![]() それでは考察です。 |
1.次の塩はどのような酸と塩基の中和によって生成するのか?
2.水溶液中で電離している様子は?
3.2−2,2−3の反応を化学反応式で表すと, Na2CO3+H2SO4→Na2SO4+H2O+CO2↑ NH4Cl+NaOH→NaCl+H2O+NH3↑ 塩の加水分解について,もう少し詳しく説明しましょう。 水溶液中の酢酸イオンの一部が水と反応すると, CH3COO−+H2O⇔CH3COOH+OH− したがって,[OH−]>[H+] 塩基性 水溶液中のアンモニウムイオンの一部が水と反応すると, NH4++H2O⇔NH3+H3O+ したがって,[H+]>[OH−] 酸性 |
今日の実験のポイントは,次の通りです。1.強酸と弱塩基からできた正塩は,加水分解すると酸性を示します。 2.弱酸と強塩基からできた正塩は,加水分解すると塩基性を示します。 3.強酸と強塩基からできた正塩の水溶液は中性です。 4.強酸と強塩基からできた酸性塩の水溶液は酸性です。 5.弱酸の塩に強酸を加えると,強酸の塩ができて,弱酸が遊離します。 6.弱塩基の塩に強塩基を加えると,強塩基の塩ができて弱塩基が遊離しています。 ![]() 今日の実験とは直接関係ありませんが,塩化水素のつくり方を知っていますか。 NaCl+H2SO4→NaHSO4+HCl 塩酸は揮発性の酸です。ところが硫酸は不揮発性の酸です。そこで,このようなルールが成立します。「揮発性の酸の塩に揮発しにくい酸を加えると,揮発しやすい酸が遊離する。」このような,塩と酸・塩基の反応は,いろいろな箇所で登場します。ぜひ,マスターして下さい。 |