2005年2月16日(水) 04ko1-27 T実験14 塩の水溶液の性質
 中学校のときに,炭酸水素ナトリウムの熱分解の実験を行っているはずですが,覚えていますか。生成物は炭酸ナトリウムと水と二酸化炭素ですね。ところで,熱分解の生成物である炭酸ナトリウムNaCOと反応物である炭酸水素ナトリウムNaHCOは,ともに白色の粉末ですね。どのようにして,区別しましたか?水に対する溶解性と,水溶液の液性ですね。
 水溶液の液性といっても,ともに塩基性です。しかし,フェノールフタレイン溶液を加えたときの色は,炭酸水素ナトリウム水溶液はうすい赤色,炭酸ナトリウムは濃い赤色です。この色の違いで区別したのでしたね。ところで,炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムは塩です。これも中学校で勉強したことですが,中和によって塩ができると覚えていませんか。そして,中和とは,酸性の性質とアルカリの性質を互いに打ち消す反応であると。
 今日は,塩が水と反応すると,酸性や塩基性を示すことがあることを学びます。どうも,この内容は高校生に理解しにくいようです。もしかすると,中学校の学習が,もしくはそのときの記憶が,塩の加水分解に対して拒絶反応を示しているのかもしれません。まず,実験を行って,事実を確認して下さい。
   

実験14 塩の水溶液の性質

<塩の加水分解>
1−1.表中の塩(1)〜(7)をそれぞれ小さじ1杯ずつ試験管に取り,水道水3m を加えて溶かす。
1−2.ガラス棒を用いて(1)〜(7)の水溶液を万能pH試験紙につけ,各水溶液のpHを調べる。
1−3.BTB溶液を1〜2滴ずつ(1)〜(7)の水溶液に加える。
塩の種類  化学式   塩の分類  pH BTB溶液の変化 液性
(1)硫酸アルミニウム




(2)塩化アンモニウム




(3)塩化ナトリウム




(4)酢酸ナトリウム




(5)炭酸ナトリウム




(6)炭酸水素ナトリウム




(7)硫酸水素ナトリウム




 それでは,実験結果を確認しましょう。

塩の種類  化学式   塩の分類  pH BTB溶液の変化 液性
(1)硫酸アルミニウム Al(SO) 正塩 黄色 酸性
(2)塩化アンモニウム NHCl 正塩 黄色 酸性
(3)塩化ナトリウム NaCl 正塩 緑色 中性
(4)酢酸ナトリウム CHCOONa 正塩 青色 塩基性
(5)炭酸ナトリウム NaCO 正塩 11 青色 塩基性
(6)炭酸水素ナトリウム NaHCO 酸性塩 8〜9 黄色 塩基性
(7)硫酸水素ナトリウム NaHSO 酸性塩 黄色 酸性

 硫酸アルミニウムAl(SO)は強酸と弱塩基からできた塩です。加水分解すると,酸性を示していますね。塩化アンモニウムNHClも強酸と弱塩基からできた塩です。加水分解すると,弱いですが酸性を示しています。
 塩化ナトリウムNaClは強酸と強塩基からできた塩です。水溶液は中性ですね。
 酢酸ナトリウムCHCOONaは弱酸と強塩基からできた塩です。加水分解すると,塩基性を示していますね。炭酸ナトリウムNaCOも弱酸と強塩基からできた塩です。加水分解すると,塩基性を示しています。炭酸水素ナトリウムNaHCOも弱酸と強塩基からできた塩です。加水分解すると,弱いですが塩基性を示しています。
 塩の加水分解によって水溶液が何性を示すか判断できますね。しかし,硫酸水素ナトリウムNaHSOは強酸と強塩基からできた塩でが強い酸性を示しています。これは電離によって,水素イオンが放出されると考えた方がよいかもしれません。
  
 塩の加水分解では,水が酸としてはたらいたり,塩基としてはたらいています。ブレンステッド・ローリーの酸・塩基の考え方です。では,水の代わりに,もっと強力な酸や塩基をはたらかせると,どのようなことが起こるのでしょうか。

<塩と酸・塩基の反応>
2−1.試験管に炭酸ナトリウムNaCOを小さじ1杯取り,蒸留水2m 加えて溶かす。
2−2.1の試験管に硫酸HSO2mを加え,発生する気体のにおいを調べる。また,湿らせた万能pH試験紙を試験管の口に近づける。
2−3.試験管に塩化アンモニウムNHClを小さじ1杯取り,水酸化ナトリウム水溶液2m を加え,発生する気体のにおいを調べる。また,湿らせた万能pH試験紙を試験管の口に近づける。

発生する気体のにおい 万能pH試験紙の色
炭酸水素ナトリウムと硫酸との反応

塩化アンモニウムと水酸化ナトリウムとの反応

 実験結果を確認しましょう。


発生する気体のにおい 発生した気体の水溶液の液性
炭酸ナトリウムと硫酸との反応 なし 酸性
塩化アンモニウムと水酸化ナトリウムとの反応 刺激臭 塩基性

 炭酸ナトリウムと硫酸の反応で発生した気体は二酸化炭素ですね。また,塩化アンモニウムと水酸化ナトリウムの反応で発生した気体はアンモニアです。
  
 それでは考察です。

1.次の塩はどのような酸と塩基の中和によって生成するのか?
(2) NHCl 強酸と弱塩基からできた塩
(4) CHCOONa 弱酸と強塩基からできた塩
(5) NaCO 弱酸と強塩基からできた塩
(6) NaHCO 弱酸と強塩基からできた塩
(7) NaHSO 強酸と強塩基からできた塩

2.水溶液中で電離している様子は?
(1) Al(SO)→2Al3++3SO2−
(2) NHCl→NH+Cl
(3) NaCl→Na+Cl
(4) CHCOONa→Na+CHCOO
(5) NaCO→2Na+CO2−
(6) NaHCO→Na+HCO
(7) NaHSO→Na+H+SO2−

3.2−2,2−3の反応を化学反応式で表すと,
 NaCO+HSO→NaSO+HO+CO
 NHCl+NaOH→NaCl+HO+NH



 
塩の加水分解について,もう少し詳しく説明しましょう。
 水溶液中の酢酸イオンの一部が水と反応すると,
 CHCOO+HO⇔CHCOOH+OH
 したがって,[OH]>[H] 塩基性
 水溶液中のアンモニウムイオンの一部が水と反応すると,
 NH+HO⇔NH+H
 したがって,[H]>[OH] 酸性

 今日の実験のポイントは,次の通りです。
1.強酸と弱塩基からできた正塩は,加水分解すると酸性を示します。
2.弱酸と強塩基からできた正塩は,加水分解すると塩基性を示します。
3.強酸と強塩基からできた正塩の水溶液は中性です。
4.強酸と強塩基からできた酸性塩の水溶液は酸性です。
5.弱酸の塩に強酸を加えると,強酸の塩ができて,弱酸が遊離します。
6.弱塩基の塩に強塩基を加えると,強塩基の塩ができて弱塩基が遊離しています。
  
 今日の実験とは直接関係ありませんが,塩化水素のつくり方を知っていますか。
 NaCl+HSO→NaHSO+HCl
 塩酸は揮発性の酸です。ところが硫酸は不揮発性の酸です。そこで,このようなルールが成立します。「揮発性の酸の塩に揮発しにくい酸を加えると,揮発しやすい酸が遊離する。」このような,塩と酸・塩基の反応は,いろいろな箇所で登場します。ぜひ,マスターして下さい。