2005年2月23日(水) 04ko1-28 環境と化学
この1年間学んだことをもとにして,酸性雨について考えてみることにしましょう。![]() 今日の勉強の具体的な内容は,次の通りです。 (1)二酸化炭素の溶解 (2)ヘンリーの法則 (3)酸性雨 では,二酸化炭素が水にどの程度溶けるか試してみましょう。 |
19 環境と化学 (1) 二酸化炭素の溶解 <実験> 注射器(100ml )を使う。 1.1本の注射器に50ml の二酸化炭素を取る。 2.もう1本の注射器に50ml の水を入れる。 3.2本の注射器をつなぐ。 4.二酸化炭素の入った注射器のピストンを押す。 5.水と二酸化炭素の入った注射器をよく振る。 6.水と二酸化炭素全体の体積を調べる。 水の体積は変わらないとする。 7.水と溶け残った二酸化炭素全体の体積を測定する。 8.水の体積は50ml のままである。 9.全体の体積から水の体積を引く(これが溶け残った二酸化炭素の体積)。 10.50ml から溶け残った二酸化炭素の体積を引く。 |
よく振ると,結構二酸化炭素が水に溶けていきます。念のため,200回くらいは注射器を振った方がよいみたいです。うまくいくと,水50ml に二酸化炭素は40ml 程度溶けます。ちなみに,二酸化炭素の溶解度は,20℃,1atm(1013hPa)のとき,水1l に3.90×10−2molとなっています。これを体積に換算すると,約940ml で,水50ml には47ml 溶けることになります。 |
(2) ヘンリーの法則 <実験> 溶け残った二酸化炭素を捨て,かわりに空気を入れる。 1.注射器の中の水溶液(炭酸水)をこぼさないように注意して,溶け残った二酸化炭素をすべて出す。 2.注射器のピストンを下げながら,空気を20ml 入れる。 3.体積の変化がなくなるまで注射器をよく振る。 4.水と気体全体の体積を調べる。
ヘンリーの法則…温度が一定で,溶解度の小さい気体が一定量の溶媒に溶けるとき,気体の溶解度(質量)はその圧力に比例する。 |
空気を入れてよく振ると,水に溶けていた二酸化炭素が出てきます。不思議ですね。では,実験結果を確認しましょう。1では,二酸化炭素の体積と水の体積の和が60ml になりました。溶け残った二酸化炭素は10ml ですから,溶けた二酸化炭素の体積は40ml となります。もちろん圧力は大気圧に等しいですから,約1.0atmです。 2では,気体の体積と水の体積の和が89ml になりました。水の体積は50ml ,空気の体積は20ml ですから,水溶液から19ml の二酸化炭素が出てきたことになります。したがって,このとき水溶液中に溶けている二酸化炭素の体積は,40−19=21〔ml 〕となります。また,二酸化炭素の分圧は,1.0×19/39=0.49〔atm〕です。 3では,気体の体積と水の体積の和が79ml になりました。水の体積は50ml ,空気の体積は20ml ですから,水溶液から9ml の二酸化炭素が出てきたことになります。したがって,このとき水溶液中に溶けている二酸化炭素の体積は,21−9=12〔ml 〕となります。また,二酸化炭素の分圧は,1.0×9/29=0.31〔atm〕です。
分圧/体積 の値は,ほぼ一定になりますね。 大気中には,0.034 %の二酸化炭素が含まれていいます。二酸化炭素の溶解度と電離度,分圧の法則を用いて,雨水のpHを計算してみると,次のようになります。 20℃,1気圧の条件では,二酸化炭素は,水1l に870ml 溶けます。20℃,1気圧における二酸化炭素の密度は0.0018g/cm3だから,水1l に約1.6 gの二酸化炭素が溶けることになります。しかし,空気中には二酸化炭素は体積で0.034%しか含まれていないため,分圧は0.00034atmです。したがって,大気中の二酸化炭素は水1l に0.00054 g溶けることになります。その水溶液の濃度は,約0.000012mol/l です。 炭酸は,次の2段階で電離します。 H2CO3 → H+ + HCO3− (電離定数:4.4×10-7) HCO3− → H+ + CO32− (電離定数:5.6×10-11) 近似的には第1段階の電離だけと考えてもいいので,水素イオン濃度は次のようになります。 水素イオン濃度[H+]=cα=√cKa=√(1.2×10-5×4.4×10-7)=√(5.28×10-12)≒2.3×10-6〔mol/l〕 したがって, pH=−log(2.3×10−6)=−log2.3+6=−0.36+6≒5.6 となります。すなわち,大気中に含まれている二酸化炭素の影響で雨水のpHは,5.6 程度であることがわかります。酸性雨の定義がpH5.6以下の雨となっている理由です。 ![]() |
(3)酸性雨 大量の石油や石炭などの燃焼によって,大気中に排出される硫黄酸化物(SO2,SO3など)や窒素酸化物(NO,NO2など)が原因 SO3+H2O→H2SO4 3NO2+H2O→2HNO3+NO pH5.6以下の雨 土壌や湖沼の酸性化 生態系に影響 野外の建造物や彫刻が侵される被害 |
環境問題を論じるためには,まだまだ化学の勉強が必要ですね。化学は生活に関係しないと考えていた人が多くいたと思いますが,この1年間で考え方は変わりましたか。いろいろと便利になった生活を送る上で,基本的な化学の知識は不可欠になっています。また,環境問題を正しく判断するためにも,化学の知識は不可欠です。 では,今日の学習内容を確認しましょう。 1.温度が一定で,溶解度の小さい気体が一定量の溶媒に溶けるとき,気体の溶解度(質量)はその圧力に比例します。kの法則を何といいますか?→ヘンリーの法則 2.酸性雨とは,どのような雨のことですか?→pH5.6以下の雨 3.酸性雨の原因物質と考えれているものは何ですか?→硫黄酸化物や窒素酸化物 |