2004年4月15日(木)04ko2-02 ヘスの法則
 前の時間は,反応熱について勉強しましたね。反応熱は,どのようにすれば求めることができるのでしょうか。
 ここに,1.0mol/ の塩酸50cm
と1.0mol/ の水酸化ナトリウム水溶液50cmがあります。これらを混ぜると,ΔT 〔K〕の温度上昇があったとします。水の比熱は4.2J/(gK)だから,反応熱は,
 =4.2×100×ΔT〔J〕です。
 この反応熱を,塩酸1molあたりに換算すると,
 =4.2×100×ΔT×1000/50〔J/mol〕
  =8.4ΔT〔kJ/mol〕になります。このようにして,反応熱を求めることができるのです。
 では,実際に温度を測定してみましょう。
 しかし,なかなか実験で直接測定できない場合があります。そのようなときは,何かうまい方法はないでしょうか。

 今日の勉強は,
 ヘスの法則
です。

2 ヘスの法則

  1840年 ヘス(スイス)
  反応熱は,反応の経路によらず,最初の状態と最終の状態で決まる。

  A:最初の状態
  B:最終の状態
  P:中間物 とすると
  A = B +  kJ
  A = P +  kJ
  P = B +  kJ
  のとき
   =  + 
 
 ヘスの法則を使うと,直接測定できない反応熱を知ることができます。
 では,具体的にヘスの法則の検証を行いましょう。次の例1は,次回行う実験9の内容です。
最初の状態Aは,固体の水酸化ナトリウムと塩酸と水です。最終の状態Bは,塩化ナトリウム水溶液と液体の水です。そして,中間物Pは,水酸化ナトリウム水溶液と塩酸です。
 水酸化ナトリウムの溶解熱は44.5kJです。教科書では45kJとなっています。また,強塩基と強酸の場合は,中和熱は酸や塩基の種類に関係なく,ほぼ一定の56.5kJ/molになります。
 実験9では,水酸化ナトリウムの溶解熱と,強酸と強塩基の中和熱も測定します。
 そして,最初の状態Aから最終の状態Bに変化するときの反応熱を測定します。もし,101kJになれば,ヘスの法則は成立するわけです。


 <例1>

  固体の水酸化ナトリウムと塩酸の反応では,     
  
NaOH(固)+HClaq+aq = NaClaq +HO(液)kJ
  水酸化ナトリウムの溶解熱は44.5kJだから,
  NaOH(固)+aq=NaOHaq+44.5kJ

  強酸と強塩基の中和熱は56.5kJだから,
  NaOHaq+HClaq=NaClqa+O(液)+56.5KJ
  =44.5+56.5=101.0〔kJ〕

  
 
 次は,酸化カルシウムを使って,ヘスの法則を検証してみましょう。
 酸化カルシウムは水と反応すると,水酸化カリウムになります。水酸化カルシウムは,もちろん酸と反応します。また,酸化ナトリウムの水溶液は塩基性を示し,酸と反応します。(このような酸化物を塩基性酸化物といいます。)

 固体の酸化カルシウムと水の反応熱は65kJです。水酸化カルシウムと塩酸の反応熱は,中和熱の2倍の113kJより少し大きく129kJです。固体の酸化カルシウムと塩酸の反応が194kJであれば,ヘスの法則は成立することになります。実測値は194kJのようです。

 <例2>

  固体の酸化カルシウムと塩酸の反応では,
  CaO(固)+2HClaq=CaClaq+HO+ kJ
  固体の酸化カルシウムと水の反応熱は65kJだから
  CaO(固)+HO=Ca(OH)(固)+65kJ
  水酸化カルシウムと塩酸の反応熱は129kJだから

  Ca(OH)(固)+2HClaq=CaClaq+2HO+129kJ
  =65+129=194〔kJ〕


 今日は,ヘスの法則について勉強しました。
 では,今日の勉強の確認です。
1.ヘスの法則について説明しなさい。→
物質が変化するとき出入りする熱量は,変化する前の状態と変化した後の状態だけで決まり,変化の過程には無関係である。
2.25℃,1atmのもとでの次の2つの熱化学方程式を用いて,同じ条件のもとで,水素と酸素から液体の水1molが生成する反応の反応熱を求めなさい。
 H
(気)+1/2O(気)=HO(気)+242kJ
 H
O(気)=HO(液)+44kJ
左辺どうし,右辺どうしを加えると,(気)+1/2O(気)+HO(気)=HO(気)+242kJ+O(液)+44kJ,(気)+1/2O(気)=O(液)+286kJ
3.炭素,水素,およびメタン1molあたりの燃焼熱は,それぞれ394kJ,286kJ,891kJである。このことから,次の反応の反応熱を求めなさい。
 C(固体)+2H
(気)→CH(気)
C(固体)+O(気)=CO(気)+394kJ…(1)
 H
(気)+1/2O(気)=HO(液)+286kJ…(2)
 CH
(気)+2O(気)=CO(気)+2HO(液)+891kJ…(3)
 (1)+(2)×2−(3)より,反応熱=394+286×2−891=75〔kJ〕

 次回は,このヘスの法則を実験で確かめてみたいと思います。