2004年6月17日(木) 04ko2-10  T実験16−金属のイオン化傾向

 今日は,イオン化傾向の実験を行いましょう。イオン化傾向とは,金属の単体が陽イオンになって溶液中に溶け出ようとする性質です。
 では,陽イオンのなりやすさは,どのようにして調べることができるのでしょうか。また,それはどのような順になっているのでしょうか。さっそく調べてみましょう。
 最初の実験は,金属片を水や酸,または金属塩の水溶液に入れ,金属片の表面を観察します。もし,金属の表面に何らかの変化があれば,水溶液の中の陽イオンが金属表面で変化したのだと考えられますね。もちろん,金属片は,金属イオンとなって水溶液中に溶け出すはずです。では,そのときどちらが陽イオンになりやすいといえますか?

実験16 金属のイオン化傾向と電池

<金属と水,酸の反応>
1−1 純水2m に金属片を入れる。
 
(a) Ca + H
 (b) Zn + H
 (c) Cu + H
   
1−2 1で反応しなかったものに希硫酸2m 加える。
 (a) Ca + HSO
 (b) Zn + HSO
 (c) Cu + HSO


Ca Zn Cu
水との反応


希硫酸との反応


発生した気体


 実験結果を確認しましょう。
 

Ca Zn Cu
水との反応 激しく反応する。 反応しない。 反応しない。
希硫酸との反応
反応する。 反応しない。
発生した気体 点火すると燃える。 点火すると燃える。
 カルシウムは冷水と激しく反応して,水素を発生します。そのとき,水酸化カルシウムができますが,水酸化カルシウムはあまり水には溶けません。したがって,溶液全体が白く濁ると思います。
 亜鉛は冷水とは反応しませんが,硫酸などの酸と反応して水素を発生します。
 銅は,希硫酸とは反応しません。銅は酸化作用のある酸,硝酸や熱濃硫酸とは反応します。
 したがって,カルシウム,亜鉛,銅の陽イオンのなりやすさは,Ca>Zn>Cu の順であることがわかりますね。

<金属と金属塩の水溶液の反応>
2 金属塩の水溶液3m に金属片を入れる。
(a) Zn + Pb(NO
(b) Cu + Pb(NO
(c) Cu + AgNO

  


Zn−Pb2+ Cu−Pb2+ Cu−Ag
変化の有無


析出した単体



 実験結果を確認しましょう。


Zn−Pb2+ Cu−Pb2+ Cu−Ag
変化の有無 Znの表面に固体がつく。 変化は見られない。 Cuの表面に固体が付く。
析出した単体 Pb
Ag
 (c)では,銅の表面にきれいな銀の結晶がしますから,銀樹とよんでいます。そして,溶液の色がしだいに青色に変化します。これは,単体のCuがCu2+に変化して,水溶液中に溶け出したからです。

<イオン化傾向と金属間の電位差>

3−1 ペトリ皿に塩化ナトリウム水溶液で湿らせたろ紙をしき,金属板や炭素板を置く。
3−2 電圧計で2種類の金属板または,金属板と炭素板の電位差を測定する。
  


電位差 −極の金属
MgとZn

MgとCu

ZnとCu

CuとC

 実験結果を確認しましょう。
 

電位差 −極の金属
MgとZn 0.4〜0.5V Mg
MgとCu 0.9〜1.1V Mg
ZnとCu 0.4〜0.6V Zn
CuとC 0.1〜0.2V Cu
 これは,結果例です。条件によって,このような結果にならないかも知れません。標準電極電位から計算すると,次のようになります。

電位差 −極の金属
MgとZn 1.6V Mg
MgとCu 2.7V Mg
ZnとCu 1.1V Zn
 炭素板に吸着されている物質によって金属板と炭素板の電位差は異なります。
 それでは,考察です。

1−1で見られる変化;
半反応式;Ca→Ca2++2e,2HO+2e→2OH+H
イオン反応式;Ca+2HO→Ca2++2OH+H
化学反応式;Ca+2HO→Ca(OH)+H
よりイオンになりやすい金属; Ca,Zn
亜鉛と希硫酸の反応;
半反応式;Zn→Zn2++2e,2H+2e→H
イオン反応式;Zn+2H→Zn2++H
化学反応式;Zn+HSO→ZnSO+H
2の結果より陽イオンになりやすいのは; Zn>Pb,Pb>Cu,Cu>Ag
2で見られる変化;
半反応式;Zn→Zn2++2e,Pb2++2e→Pb
       Cu→Cu2++2e,Ag+e→Ag
イオン反応式;Zn+Pb2+→Zn2++Pb
         Cu+2Ag→Cu2++2Ag
1〜2より,イオン化傾向の順は; (大)← Ca>Zn>Pb>Cu>Ag →(小)
3で負極になる金属は; イオン化傾向の大きい金属である。
3よりイオン化傾向の大きさは;(大)← Mg>Zn>Cu →(小)

 
標準電極電位
 単体を,そのイオンが1mol/ で存在する溶液につけたとき,単体と溶液の間に生じる起電力
 イオン化列の具体的な順序を示す
 Mg
2+ + 2e ⇔ Mg −2.363V
 Zn
2+ + 2e ⇔ Zn  −0.763V
 Cu
2+ + 2e ⇔ Cu  +0.337V
 Ag
 + e ⇔ Ag    +0.799V


 今日の実験のポイントは,次の通りです。
1.イオン化傾向の大きい金属Caは,室温で水と反応して水素を発生します。
2.Hよりイオン化傾向の大きい金属Znは,希酸と反応して水素を発生します。
3.Hよりイオン化傾向の小さい金属Cuは,希酸と反応しません。
4.ZnはpPbよりイオン化傾向が大きいので,Zn+Pb2+→Zn2++Pbの変化が起こります。
5.CuはAgよりイオン化傾向が大きいので,Cu+2Ag→Cu2++2Agの変化が起こります。
6.電池で負極になる金属は,よりイオン化傾向の大きい金属です。