2004年7月1日(木) 04ko2-13 ファラデーの法則
銅電極を用いて硫酸銅(II)水溶液の電気分解を行うと,陰極の銅板は質量が増加し,陽極の銅板は質量が減少します。それでは,陰極の質量の増加分と陽極の質量の減少分はどのような関係があるのでしょうか。また,この質量の増減は,回路を流れた電気量とどのような関係があるのでしょうか。電気分解のところで学んだように,白金電極を用いて硫酸銅(II)水溶液の電気分解を行うと,陰極には銅が析出し,陽極からは酸素が発生しますね。では,析出する銅の質量と発生する酸素の体積は,何によって決まるのでしょうか。 今日の勉強の内容は,次の通りです。 (1)電気量と物質量 (2)ファラデーの法則 (3)硫酸銅(II)水溶液の電気分解(銅電極) (4)硫酸銅(II)水溶液の電気分解(白金電極) 最初は,電気量と物質量の関係です。電気の量を電気量といいます。電気量の単位にはクーロン(記号C)を使います。1Cは,1アンペアの電流が1秒間に運ぶ電気量に等しいのです。また,電子1個の電気量は1.602×10−19Cです。 |
10 ファラデーの法則 (1) 電気量と物質量 CuCl2 → Cu2+ + 2Cl− 陰極:Cu2+ + 2e− → Cu 陽極:2Cl− → Cl2 + 2e− 単位時間に移動する電子の数→陰極と陽極で同じ 移動した電子の総数→陰極と陽極で同じ 電子2個が流れる→陰極:銅(U)イオンが1個還元され,銅原子が1個できる 陽極:塩化物イオンが2個酸化され,塩素分子が1個できる 電子2mol流れる→陰極:銅(U)イオンが1mol還元され,銅原子が1molできる 陽極:塩化物イオンが2mol酸化され,塩素分子が1molできる |
電子1個の電気量は1.602×10−19Cであることがわかっていますから,電子1molの電気量は,1.602×10−19×6.022×1023≒96500〔C/mol〕ということになりますね。では,電気分解おける生成物の質量は,電気量とどのような関係があるのでしょうか。ここでは,イオンの価数に注目する必要があります。 ![]() |
(2) ファラデーの法則 96500C/mol=ファラデー定数(F )=電子1molあたりの電気量 1833年ファラデー(イギリス) 電気分解の法則(ファラデーの法則) 電極で変化するイオンの物質量は,通じた電気量に比例する 同一の電気量を通じたときに,電極で変化するイオンの物質量は,イオンの価数に反比例する |
マイケル・ファラデーはイングランドの貧しい家に生まれました。初等学校を終えると,13歳で製本屋に奉公にいきました。そこで,製本しながら,その本を読み,知識を広げていったそうです。特に彼が興味を持ったのは。自然科学の本でした。たまたま,デービーの講演を聴き,そのときとったノートがきっかけで1813年に王立研究所の研究室にデービーの助手として採用されました。最初は時週給はわずかでしたが,次第に才能を発揮し,数年もたたないうちにデービーの仕事に匹敵する研究を行いました。1825年には,王立研究所におけるデービーの後継者となり,死ぬまでそこで活躍しました。現在使われている化学用語の中には,彼が命名したものが多くあります。例えば,電極(electrode),電解質(electrolyte),電気分解(electrolysis),陽極(anode),陰極(cathode),イオン(ion),陰イオン(anion),陽イオン(cation)などです。 ファラデーの業績は,電気分解の法則以外にベンゼンの発見(1825年)ナフタレンスルホン酸の発見(1826年)など化学の内容だけでなく,電気誘導現象の発見(1831年),電場・磁場の概念の確立(1837年)など物理学のものも多くあります。まさに,自然科学のスーパーマンですね。 それだけではありません。彼は1825年から1862年まで,王立研究所で金曜日の夜に公開講演を行いました。とくにクリスマス講義といって少年少女のためのわかりやすい講義を数回連続で開き大人気を博しました。それを1冊の本にまとめた「ロウソクの科学」は現在でもなお版を重ねています。 ![]() |
(3) 硫酸銅(II)水溶液の電気分解(銅電極) CuSO4 → Cu2+ + SO42− 陽極:Cu → Cu2+ + 2e− 陰極:Cu2+ + 2e− → Cu 1.0〔A〕の電流を300〔秒〕通すと, 電気量=1.0〔A〕×300〔秒〕=300〔C〕 1F =96500Cだから,300〔C〕では,電子の物質量=300/96500=0.0031〔mol〕 析出もしくは溶解する銅の物質量は,電子の物質量の1/2だから, 63.55×1/2×0.0031≒0.099〔g〕 0.01gの感量の天秤では0.10gの質量の増減が期待できる |
硫酸銅(II)水溶液を白金電極を用いて電気分解すると,陽極から酸素が発生しましたね。では,銅電極を白金に変えて,他の条件がすべて同じだとすると,発生する酸素の体積はいくらになるでしょうか。![]() |
(4) 硫酸銅(II)水溶液の電気分解(白金電極) CuSO4 → Cu2+ + SO42− 陽極:2H2O → O2 + 4H+ + 4e− 陰極:Cu2+ + 2e− → Cu 1.0〔A〕の電流を300〔秒〕通すと, 電気量=1.0〔A〕×300〔秒〕=300〔C〕 1F =96500Cだから,300〔C〕では,電子の物質量=300/96500=0.0031〔mol〕 陽極から発生する酸素の物質量は,電子の物質量の1/4だから, 標準状態における体積=22.4×1/4×0.0031×1000≒17〔ml 〕 陽極→標準状態で約17mlの酸素の発生が期待できる 陰極→約0.10gの銅の析出が期待できる |
ファラデーの法則を使うと,電気分解における物質の変化の量がわかります。とても便利ですね。この機会に,皆さんもファラデーのファンになりませんか。ファラデーはいうまでもなく偉大な化学者です。でも,彼の才能を見出し,育てた師デービーも偉大な人物ですね。彼は,融解塩電解を使って,1807年にカリウムとナトリウム,1810年に塩素を発見しています。 やはり,偉い先生のもとから偉大な人物が生まれるのですね。 ![]() それでは,今日の勉強の確認をしましょう。 1.塩化物イオン2molを塩素分子1molにするには,何molの電子を取り除くことが必要ですか?→2mol 2.銅イオン1molを銅1molにするには,何molの電子を与えることが必要ですか?→2mol 3.電気分解では,流れた電気量と変化する物質の物質量は比例します。この法則を何といいますか。→ファラデーの法則 4.電子1molは何Cですか?→96500C 5.5.0Aの電流を10分間通すと,電気量は何Cですか?→3000C |