2004年8月24日(火) 04ko2-17  酸素・硫黄の単体と化合物
 今日は16族元素について勉強します。16族元素は酸素族元素ともいい,酸素,硫黄が代表的です。酸素と硫黄の化合物の1つが二酸化硫黄です。
 酸素の発見はプリーストーリーというイギリス人といわれていますが,1779年にフランスのラボアジェによって命名されています。名前の由来は,酸の素という意味です。ラボアジェは,酸化物は酸と考えていたようです。
 硫黄は天然に産出するので,有史以前から知られていたようです。1777年にラボアジェが元素として分類しています。どちらの元素も,ラボアジェと関係が深いのですね。
 今日の内容は,次の通りです。
(1)酸素族元素
(2)二酸化硫黄
(3)硫酸
(4)硫化水素
 では,酸素族元素からはじめましょう。

12 酸素・硫黄の単体と化合物
(1) 酸素族元素
  O oxgen 酸っぱい+gen素(ラボアジェ) 
  S sulfur ラテン語のイオウ
  Se selenium ギリシア語で月
  Te tellurium ラテン語で地球
                 
  価電子が6個→2個の陰イオン,他の原子と共有結合


 セレンとテルルの名前について,少し解説をしましょう。
 
1782年にオーストリアのミュラー,そして1783年にルーマニアのライヘンシュタイン男爵によって,新しい元素らしいものが発見されました。telluriumの語源tellusはラテン語で地球という意味であるとともにローマ神話で大地の女神の名でもあり,1798年に新元素であることを確認したクラップロートによって命名されました。彼は,10年前にすでにウランを発見し,天の神の名をとって命名された新惑星ウラノス(天王星)にちなんで名づけており,テルルはこれに対抗して名づけたようです。
 セレンはイオウとテルルのかげに隠れていたために未発見のままでしたが,1817年になってスウェーデンの化学者ベルセーリウスとガーンにより,硫酸製造のため硫黄を燃焼した後に生じた沈殿物から,テルルに似た未知の元素として発見されました。その名前は,ラテン語の地球(tellus)がテルルの語源に用いたのに対して,ギリシャ語の月(selene)にちなんで,seleniumと命名されました。

 次は二酸化硫黄です。二酸化硫黄は亜硫酸ガスともよばれ,硫黄や硫化物を燃やすとできます。刺激臭のある無色の気体で,湿った空気中で発煙しやすく,水に比較的よく溶けます。硫黄を燃やすと,白い煙が見られますが,二酸化硫黄は無色の気体です。間違わないように気をつけてください。
 二酸化硫黄が水に溶けると弱い酸性を示します。これは,水と反応すると亜硫酸ができるからです。
 二酸化硫黄の性質で重要なのは,還元性と漂白作用です。ただし,二酸化硫黄は酸化剤としてはたらくこともあるので要注意です。以前に,酸化還元のところで,過酸化水素が酸化剤としてはたらくときと,還元剤としてはたらくときがあることを学びましたね。覚えていますか。漂白作用は,ハロゲンのところでも出てきましたので,あわせて整理しておいてください。
 この講座では,ときどき⇔の記号がでると思います。化学反応式で,酢酸の電離などのように,反応がどちらにも進む場合の反応式には,→と←を上下に重ねた記号を使います。しかし,残念ながら,この講座ではその記号が使えません。仕方がないので,⇔で代用します。あくまでも,この講座だけの約束ごとですので,注意してください。  

(2) 二酸化硫黄
 <製法>
   S + O → SO
   NaHSO + HSO → NaHSO + HO + SO
   亜硫酸水素ナトリウム
   NaSO + HSO → NaSO + HO + SO
   亜硫酸ナトリウム
   Cu + 2HSO → CuSO + 2HO + SO
 <水溶液>
   SO + HO ⇔ HSO
   HSO + HO ⇔ H + HSO
   HSO + HO ⇔ H + SO2−
 <還元性>
   SO + 2HO → SO2− + 4H + 2e (還元剤)
   SO + 2HO + I → 2HI + HSO
   5SO + 2HO + 2KMnO → KSO + 2MnSO + 2HSO
 <酸化剤としてはたらくとき>
   SO + 4H + 4e → S↓ + 2H
   SO + 2HS → 3S↓ + 2H

 次に,硫酸について説明しましょう。硫酸は,粘性の強い無色の液体です。硫酸をつくるためには,二酸化硫黄から三酸化硫黄にする必要があります。その反応では,酸化バナジウム(V)という触媒を使います。触媒については,詳しくは化学IIで学びます。いまは,反応を速くする効果があるものとしておきましょう。三酸化硫黄を水に溶かすと硫酸になります。
 希硫酸はよく使うことがありますが,濃硫酸を使う機会は少ないですね。水との反応で激しく発熱しますから,濃硫酸を水でうすめるときは,特に注意が必要です。水に濃硫酸を少しずつ加えながらうすめます。誤ると,事故につながります。

                           

(3) 硫酸
 <製法>
   S + O → SO
   2SO + O → 2SO
           酸化バナジウム(V)
   SO + HO → HSO
 <性質>
   無色油状の粘性の大きい重い液体(密度1.83g/cm
   沸点が高い(338℃)
   吸湿性が強い→乾燥剤
   脱水作用→炭化
   熱濃硫酸には強い酸化作用
がある

 硫化水素は,火山や温泉の雰囲気を漂わせる臭いです。実際に,火山地帯の噴出ガスやある種の温泉に含まれているようです。いわゆる腐卵臭に似た悪臭で,有毒です。ですから,実験室では,ドラフトの中で発生させ,その水溶液を使って実験を行います。くれぐれも,硫化水素を発生させているとき,ドラフトの中に頭を入れないようにしてください。
                    
 硫化水素のポイントは,還元性と金属元素の硫化物です。硫化水素は水に比較的溶け,水溶液は弱い酸性を示します。水と反応すると,オキソニウムイオンができることで説明できますね。硫化水素が電子を放出すると,硫黄ができます。したがって,硫化水素が酸化されると,溶液は白く濁ります。硫黄の微粒子ができるからです。
 最後に,金属元素の硫化物の話をしましょう。塩化物イオンの検出には硝酸銀水溶液を使いますね。その理由は,塩化銀は難溶性の塩だから,沈殿が生じるのです。塩化銀は色沈殿ですね。同じ色の塩では,硫酸バリウムなどが重要です。一般に,硫化物も難溶性のものが多く,沈殿になります。
 硫化物は,pHによって沈殿の仕方が変わります。また,沈殿は黒色が多いのですが,それ以外に白色や黄色などもあります。したがって,これらから,金属の陽イオンを調べる重要な手がかりになるのです。

(4) 硫化水素
 <製法>
   FeS + HSO → FeSO + H
 <水溶液>
   HS + HO ⇔ HS + H
   HS + HO ⇔ S2− + H
 <還元性>
   HS → S↓ + 2H + 2e(還元剤)
   HS + H → S↓ + 2H

 
<金属イオンとの反応>
    
Pb2+ + S2− → PbS(黒色)
   Zn2+ + S2− → ZnS(白色)
   Fe2+ + S2− → FeS((黒色)
   Cu2+ + S2− → CuS(黒色)
   2Ag + S2− → AgS(黒色)
 二酸化硫黄も硫化水素も,ともに水に比較的溶け,水溶液は酸性を示します。また,両者とも還元性を示します。しかし,二酸化硫黄が硫化水素と反応するときは,二酸化硫黄は酸化剤としてはたらきます。その点を注意してください。
 では,最後に今日の学習内容の確認をしておきましょう。
1.
亜硫酸水素ナトリウムに希硫酸を加えると,二酸化硫黄が発生します。この反応を,化学反応式で表しなさい。→NaHSO+HSO→NaHSO+HO+SO
2.二酸化硫黄は,水に比較的よく溶け,その一部は亜硫酸になります。この反応を,化学反応式で表しなさい。→SO+HO→HSO
3.硫酸は,二酸化硫黄を酸化して三酸化硫黄とし,これを水と反応させてつくります。二酸化硫黄を酸化するときに用いられる触媒は何ですか?→酸化バナジウム(V)V
4.濃硫酸は有機化合物中の水素原子と酸素原子を水分子として取り除く性質があります。これを何作用といいますか?→脱水作用
5.熱濃硫酸には強い何作用がありますか?→酸化作用
6.硫化鉄(II)に希硫酸を加えると,硫化水素が発生します。この反応を,化学反応式で表しなさい。→FeS+HSO→FeSO+H
7.硫化水素水は水に少し溶けます。水溶液は何性をしましますか。→弱い酸性
8.硫化水素は還元性を示し,二酸化硫黄と反応すると,硫黄が沈殿します。この反応を,化学反応式で表しなさい。→SO+2HS→2HO+3S
9.鉛(II)イオンを含む水溶液に硫化水素を通じると,何色の沈殿が生じますか?→黒色(PbS)