2004年9月9日(木) 04ko2-19 窒素・リンの単体と化合物

 今日は,15族典型元素の窒素とリンについて勉強しましょう。
 窒素原子には,価電子は何個ありましたか? 5個ですね。そのうち,非共有電子対が1対と,不対電子が3個存在します。したがって,共有結合が3箇所できるのですね。
 窒素元素の発見は1772年で,スコットランドのラザフォードによります。ラザフォードという名前は聞いたことがあると思いますが,そのラザフォードとは違います。この気体中では,ネズミなどがすぐに窒息するので,1789年フランスのラボアジェがazote(ギリシャ語で生命がない)と呼んだそうです。 窒素の英語名nitrogenは,窒素が硝石から生じることに由来するようです。また,ドイツ語ではStickstoff(窒息させる+物質)が用いられ,日本語の窒素はその直訳のようです。
 15族の元素を窒素族元素ともいい,窒素・リン・ヒ素などがあります。
 今日の学習内容は,次の通りです。
(1)窒素族元素
(2)アンモニア
(3)硝酸
(4)窒素酸化物
(5)リンの単体と化合物
 内容が多いですが,がんばりましょう。               

13 窒素・リンの単体と化合物
(1) 窒素族元素
  N nitrogen 硝石(ギリシャ語)
  P phosphorus 光+運ぶもの(ギリシャ語)
  As arsenic 強く(毒)作用する(ギリシャ語)
  価電子が5個
 中学校のときにアンモニアの噴水実験がありましたね。覚えていますか?乾いた丸底フラスコの中にアンモニアを入れておき,ガラス管を通してその先を水の中につけておきます。フラスコ内に少量の水を入れると,ガラス管から水が吸い上げられ,噴水が見られます。中学生に最も人気の高い実験の1つです。忘れている人は,中学校の教科書で復習しておいてください。これは,アンモニアが非常に水に溶けやすいことを示す実験です。
                           
 普通,実験室ではアンモニウム塩を強塩基とともに加熱して発生させますが,工業的にはそれではコストが高くつきすぎです。空気中に窒素の単体がたくさんありますから,これと水素を直接化合させればアンモニアが合成できるはずですが,これがなかなか難しいのです。くわしいことは化学IIでやりますが,ハーバー・ボッシュ法という,鉄を主成分とする触媒を用いる方法がとられています。ハーバーもボッシュも,人の名前です。この合成方法は,触媒と平衡の研究の成果によって可能になりました。

(2) アンモニア
  2NHCl + Ca(OH) → CaCl + 2HO + 2NH
  N + 3H → 2NH ハーバー・ボッシュ法(1906年)
 ところで,代表的な酸に,塩酸・硫酸・硝酸などがありますね。塩酸は,塩化水素が水に溶けていますが,塩化水素のつくり方は覚えていますか?塩化ナトリウムに濃硫酸加えて加熱するのでしたね。これは,揮発性の酸の塩に不揮発性の酸を加えると,揮発しやすい酸が遊離する現象の代表的なものです。
 次に,硫酸のつくり方も勉強しましたね。酸化バナジウム(X)を触媒として二酸化硫黄を酸化し,生じた三酸化硫黄を水と反応させてつくります。
 では,硝酸はどのようにしてつくるのでしょう?実験室では硝酸塩に濃硫酸を加え,加熱して発生させます。これも揮発性の酸の塩に不揮発性の酸を加えると,揮発しやすい酸が遊離するですね。工業的には,オストワルト法というものがあります。これは,アンモニアを酸化させ,一酸化窒素をつくります。できた一酸化窒素は空気中の酸素と反応して二酸化窒素になり,これが水に吸収されると硝酸になるのです。
 硝酸の試薬瓶は,なぜ褐色か知っていますか?光に当たると分解して二酸化窒素を生じるためです。
 硝酸は強酸としてはたらくだけでなく,強い酸化剤であり,イオン化傾向の小さい銅・水銀・銀などを酸化して溶かします。このとき,濃硝酸では二酸化窒素が発生しますが,希硝酸では一酸化窒素が発生することに気を付けてください。
 また,アルミニウム,鉄,ニッケルなどは,濃硝酸には溶けません。これは,金属の表面に酸化被膜ができるためで,この状態を不動態といいます。これも,覚えておいてください。
              

(3) 硝酸
  KNO + HSO → KHSO + HNO
  オストワルト法(1903年)
  4NH + 5O → 4NO + 6H
  2NO + O → 2NO 
  3NO + HO → 2HNO + NO
  強い酸化作用
  希硝酸 HNO + 3H + 3e → NO + 2H
        Cu → Cu2+ + 2e
        3Cu + 2HNO + 6H → 3Cu2+ + 2NO + 4H
        3Cu + 8HNO → 3Cu(NO) + 2NO + 4H
  濃硝酸 HNO + H + e → NO + H
        Cu → Cu2+ + 2e
        Cu + 2HNO + 2H → 2NO + 2HO + Cu2+
        Cu + 4HNO → Cu(NO) + 2NO + 2H
 窒素の単体は,化学的に不活性で,安定です。しかし,火花放電を行ったり,高温の状態では酸素と直接化合して一酸化窒素NOになります。一酸化窒素は空気中の酸素と反応して二酸化窒素になります。
 ところで,この反応では,2体積の一酸化窒素と1体積の酸素から2体積の二酸化窒素ができるはずですが,実はそうはなりません。それは,二酸化窒素の一部が四酸化二窒素になるからです。すなわち,2体積の二酸化窒素が1体積の四酸化二窒素になるため,体積が減少します。
 また,一酸化窒素は無色で水に溶けにくいですが,二酸化窒素は赤褐色で水によく溶けることを覚えておいてください。

(4) 窒素酸化物
  
NO…無色,水に不溶
  2NO + O → 2NO
  50cm 25cm 50cmにならない
  2NO ⇔ N
  NO …赤褐色,水に易溶(反応)
  2NO + HO(冷水) → HNO + HNO 
 ストーブの近くの空気中には,窒素酸化物の濃度が高くなっています。これは,高温の状態では,窒素は酸化するからです。身近なところでは,自動車のエンジンや火力発電所なども高温の状態です。したがって,窒素酸化物が排出される可能性が高いのです。前に学習した硫黄酸化物や窒素酸化物は,酸性雨の主な原因とされています。それを防ぐために,私たちにできることは何でしょうか?

 リンは人の髪の毛や骨に含まれるので,まれに墓場でリン光を見かけることがあるそうです。これが火の玉の正体でしょうか?    
 リンを含む最も重要な生体分子は核酸で,DNAとRNAがあることは知っていますね。また,アデノシン三リン酸ATPも重要なリン化合物です。
 リンの単体には黄リンと赤リンがあり,これらは互いに同素体ですね。黄リンは淡黄色の固体で,空気中で自然発火するので,水の中に保存します。また,毒性が強いことも知られています。これに対して,赤リンは赤褐色の固体で,無毒です。
        

(5) リンの単体と化合物

   リン酸カルシウムを主成分とするリン鉱石を,電気炉中でケイ砂やコークスと反応させてつくる
   Ca(PO) + 3SiO + 5C → 3CaSiO + 5CO + 2P
   リンの蒸気を水中で固化→黄リン
   黄リンを空気を絶って約250℃に加熱→赤リン
 <黄リン>
   淡黄色ろう状の固体
   空気中で自然発火(水中に保存)
   毒性が強い
 <赤リン>
   赤褐色の固体
   250℃以下では燃えない
   無毒
 リンを空気中で燃やすと,十酸化四リンの白煙を生じます。この物質は潮解性があり,吸湿性が強く,水を加えて加熱すると,リン酸になります。リン酸は比較的弱い酸で,3段階の電離をします。
 それでは,今日の学習内容の確認です。
1.塩化アンモニウムに水酸化カルシウムを混ぜて加熱すると,アンモニアが発生します。この反応を,化学反応式で表しなさい。→2NHCl+Ca(OH)→CaCl+2HO+2NH
2.アンモニアは,工業的には窒素と水素を体積比1:3で混合し,約3.0×10Pa,500℃で化合させてつくります。これを何法といいますか?→ハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)
3.アンモニアと空気を混合し,約800℃の白金網の間に通じると,アンモニアは酸化されて一酸化窒素になります。これを空気酸化によって二酸化窒素にし,水に吸収させると硝酸ができます。この硝酸の,工業的製法を何法といいますか?→オストワルト法
4.硝酸は酸としてはたらくほか,強い何剤ですか?→酸化剤
5.濃硝酸に溶けない金属を3種類あげなさい。→アルミニウム,鉄,ニッケル
6.5の金属が濃硝酸に溶けないのは,金属表面に緻密な酸化皮膜が生じ,内部を保護するためです。金属のこのような状態を何といいますか?→不動態
7.一酸化窒素と二酸化窒素のうち,水に溶けやすいのはどちらですか?→二酸化窒素
8.黄リンと赤リンのうち,毒性が強く,自然発火するのはどちらですか。→黄リン