今日は,アルミニウムと亜鉛の実験です。アルミニウムは13族,亜鉛は12族で,ともに周期表の中央付近に位置します。また,アルミニウムと亜鉛は,ともに両性元素とよばれています。両性元素とはどのような性質の元素でしょうか。実験を通して調べましょう。この実験では,比較のためにマグネシウムも使います。小学校のとき,アルミニウムは塩酸にも溶けるし,水酸化ナトリウム水溶液にも溶けることを学んでいますが,きっと覚えていないでしょうね。じつは,アルミニウムはとても難しい金属なのです。また,亜鉛も,塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の両方と反応します。しかし,マグネシウムは水酸化ナトリウム水溶液と反応しません。 すなわち,酸とも塩基とも反応するのが,アルミニウムと亜鉛の特徴なのです。 ![]() |
実験23 アルミニウムと亜鉛 <アルミニウム,亜鉛,マグネシウムの性質> 1.塩酸,水酸化ナトリウム水溶液を各2ml ずつ入れた2本の試験管を3組用意する。それぞれにアルミニウム,亜鉛,マグネシウムの3種類の金属片を1〜2枚入れる。水酸化ナトリウム水溶液については,少し加熱する。気体の発生がみられたらキャップをして気体を集め,マッチで点火する。
|
実験の結果を確認しましょう。アルミニウムと亜鉛は,酸とも反応するし,塩基とも反応します。しかし,マグネシウムは酸と反応するだけですね。アルミニウムが塩基と反応してできたイオンを,テトラヒドロキソアルミン酸イオン[Al(OH)4]+といいます。亜鉛が塩基と反応してできたイオンを,テトラヒドロキソ亜鉛(U)酸イオン[Zn(OH)4]2+といいます。
次に,アルミニウムイオンと亜鉛イオンについて調べてみましょう。試薬として,塩化アルミニウム水溶液,塩化亜鉛水溶液を使います。 |
<アルミニウムイオン,亜鉛イオンの性質> 2−1 2本の試験管に,塩化アルミニウム水溶液と塩化亜鉛水溶液を各4ml ずつとり,水酸化ナトリウム水溶液を2滴加えてよく振り,変化を観察する。
2−2 2−1の各試験管の内容物の半分を,それぞれ別の試験管にとる。一方の試験管には水酸化ナトリウム水溶液を,他方の試験管には塩酸を1滴ずつ加えて,その都度よく振り,変化を観察する。(各溶液とも10滴程度で止める。)
2−3 試験管に塩化アルミニウム水溶液と塩化亜鉛水溶液を各2ml ずつとり,アンモニア水を1滴ずつ加えてよく振り,変化を観察する。沈殿を確認した後,さらにアンモニア水を15滴程度加える。
|
実験の結果を確認しましょう。塩化アルミニウム水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を2滴加えると,水酸化アルミニウムの沈殿がみられます。しかし,さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えていくと,沈殿が消えます。テトラヒドロキソアルミン酸イオンができているからです。また,水酸化アルミニウムに塩酸を加えていくと,アルミニウムイオンになるため,沈殿が消えます。 テトラtetraとはギリシャ語の数詞で4を意味します。錯陰イオンでは,元素名の語尾に「〜酸」をつけます。ヒドロキソとはOH−のことです。 塩化亜鉛も同様です。水酸化ナトリウム水溶液を2滴加えると,水酸化亜鉛の沈殿がみられます。しかし,さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えていくと,テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンになって,沈殿が消えます。また,水酸化亜鉛に塩酸を加えていくと,亜鉛イオになるため,沈殿が消えます。
アンモニアは弱い塩基ですが,水溶液中で水と反応して水酸化物イオンを生じます。 NH3 + H2O → NH4+ + OH− したがって,塩化アルミニウム水溶液や塩化亜鉛水溶液にアンモニア水を加えると,ともに水酸化物の沈殿が生じます。ところが,さらにアンモニア水を加えると,水酸化亜鉛だけが変化をします。水酸化亜鉛は,テトラアンミン亜鉛(II)イオンとなって溶けます。これが,アルミニウムと亜鉛の違いです。アンミンとはNH3のことです。
それでは考察です。 |
1.塩酸と金属の反応は, 2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2 Zn + 2HCl → ZnCl2 + H2 Mg + 2HCl → MgCl2 + H2 2.水酸化ナトリウムと金属の反応は, 2Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] + 3H2 Zn + 2NaOH + 2H2O → Na2[Zn(OH)4] + H2 MgはNaOHとは反応しない 3.アルミニウムイオン,亜鉛イオンと少量の水酸化ナトリウム水溶液の反応は, Al3+ + OH− → Al(OH)3 Zn2+ + OH− → Zn(OH)2 4.沈殿と,水酸化ナトリウム水溶液および塩酸の反応は, Al(OH)3 + NaOH → Na[Al(OH)4] Al(OH)3 + 3HCl → AlCl3 + 3H2O Zn(OH)2 + 2NaOH → Na2[Zn(OH)4] Zn(OH)2 + 2HCl → ZnCl2 + 2H2O 5.アルミニウムイオン,亜鉛イオンにアンモニア水を加えたときの変化は, 少量: Al3+ + 3OH− → Al(OH)3 多量: 変化無し 少量: Zn2+ + 2OH− → Zn(OH)2 多量: Zn(OH)2 + 4NH3 → [Zn(NH3)4]2+ + 2OH− 6.両性元素は,アルミニウム,亜鉛以外にスズや鉛などがある。 |
今日の実験のポイントは,次の通りです。1.アルミニウムや亜鉛は,酸・塩基ともに反応します。 2.アルミニウムイオンや亜鉛イオンに少量の塩基を加えると,水酸化物の沈殿が生じます。 3.水酸化アルミニウムや水酸化亜鉛は,両性水酸化物であり,酸とも塩基とも反応します。このとき,水酸化アルミニウムAl(OH)3はテトラヒドロキソアルミン酸イオン[Al(OH)4]−に,水酸化亜鉛Zn(OH)2はテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン[Zn(OH)4]2−になっています。 4.アルミニウムイオンや亜鉛イオンに少量のアンモニア水を加えると,水酸化物の沈殿が生じます。 5.水酸化アルミニウムに多量のアンモニア水を加えても,変化が見られません。 6.水酸化亜鉛に多量のアンモニア水を加えると,テトラアンミン亜鉛(II)[Zn(NH3)4]2+となって溶けます。 |