2004年11月18日(木) ko2-32 I実験32−金属イオンの反応

 今日は主に銀イオンと鉛イオンの実験です。
 銀イオンに塩化物イオンを加えると,塩化銀AgClの白色沈殿ができることを知っていますね。実は,高校化学で扱う塩化物の沈殿は,塩化銀と塩化鉛だけです。しかも,両方とも白色沈殿です。では,どのようにして区別すればよいのでしょうか。      

実験32 金属イオンの反応
<銀イオンの反応>
1 3本の試験管に塩酸HClを1m ずつ取り,硝酸銀AgNO溶液を2滴ずつ加える。
2 1本目には沸騰石と純水2m を加え,30秒間加熱して沈殿の溶解性を調べる。
3 2本目には,6mol/ アンモニアNH水を5滴加え,よく振って沈殿の溶解性を調べる。
4 3本目には,0.5mol/チオ硫酸ナトリウムNa水溶液を5滴加え,沈殿の溶解性を調べる。
      

 実験結果を確認しましょう。
 塩酸HClに硝酸銀AgNO溶液を加えると,白濁します。これは難溶性の塩化銀AgClの沈殿ができるからです。この塩化銀AgClは加熱してもほとんど溶けません。しかし,アンモニア水やチオ硫酸ナトリウム水溶液を加えると溶けます。これは,錯イオンになるからで,アンモニア水を加えるとジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH)に,チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えるとビスチオスルファト銀(I)酸イオン[Ag(S3−になります。
 なお,銀の化合物は感光性があり,塩化銀の沈殿はやがて紫黒色に変化します。これは,光によって分解され,次の反応が起こるからです。2AgCl→2Ag+Cl 
      
 次は,鉛イオンの実験です。鉛といえば,鉛蓄電池を思い出しますね。
    
 ここで,鉛蓄電池の復習です。
 (−)Pb|HSOaq|PbO(+)
 (負極)Pb+SO2−→PbSO+2e
 (正極)PbO+4H+SO2−+2e→PbSO+2H
 それでは,話を戻して,鉛イオンの実験を行いましょう。

<鉛イオンの反応>  
5 塩酸HClを試験管に1m 取り,硝酸鉛(II)Pb(NO水溶液を2滴加えて変化を調べる。
6 5の試験管に純水2m と沸騰石を入れて加熱する。
7 6の試験管を水道水で冷却する。

 実験結果を確認しましょう。
 塩酸HClに硝酸鉛(II)Pb(NO水溶液を加えると,白濁します。これは難溶性の塩化鉛(II)PbClの沈殿ができるからです。しかし,この沈殿を加熱すると,水に溶けます。ここが塩化銀AgClとの違いです。温度が高くなると,溶解度が増すのです。その証拠に,冷却すると再び沈殿が析出します。

<銀イオンの反応2>
8 3本の試験管に,0.1mol/ 塩化カリウムKCl水溶液,0.1mol/ 臭化カリウムKBr水溶液,0.1mol/ ヨウ化カリウム水溶液KIを,それぞれ3m ずつ取り,硝酸銀AgNO水溶液を2滴ずつ加える。
9 8の試験管を各水溶液をそれぞれ3等分し,1本目には日光に当てる。2本目には6mol/ アンモニアNH水,3本目には0.5mol/チオ硫酸ナトリウムNa水溶液を5滴加え,沈殿の溶解性を調べる。

硝酸銀との変化 沈殿の色 光による変化 アンモニア水 チオ硫酸ナトリウム
KCl




KBr




KI





  実験結果を確認しましょう。
 

硝酸銀との変化 沈殿の色 光による変化 アンモニア水 チオ硫酸ナトリウム
KCl
白色沈殿 紫色から黒ずむ 溶ける 溶ける
KBr
淡黄色沈殿 黒ずむ 少し溶ける 溶ける
KI
黄色沈殿 ほとんど変化なし 溶けない 少し溶ける
 同じハロゲン化銀でも,塩素Cl,臭素Br,ヨウ素Iではハロゲン化銀の性質に違いが見られますね。
   
 それでは,考察です。        

1.操作1〜7をまとめると,
        HCl        熱湯
 Ag(無色)→AgCl↓(白色)→溶けない
                   NHaq
          AgCl↓(白色)→[Ag(NH(無色)
                   Naaq
          AgCl↓(白色)→[Ag(S3−(無色)
         HCl        熱湯
 Pb2+(無色)→PbCl↓(白色)→溶ける
2.操作8〜9の反応をまとめると,
 Ag + Cl → AgCl↓
 Ag + Br → AgBr↓
 Ag + I → AgI↓
 AgCl + 2NH → [Ag(NH + Cl
 AgBr + 2NH → [Ag(NH + Br
 AgCl + 2S2− → [Ag(S3− + Cl
 AgBr + 2S2− → [Ag(S3− + Br

 銀の反応をまとめると,次のようになる。



 
金属の塩化物について,もう少し詳しく説明しましょう。
 金属の塩化物は一般に水に溶けやすいのですが,AgとPbのハロゲン化物は塩化物に限らず概ね水に溶けにくいのです。これは,いずれも金属元素の陽性が小さく,塩素との結合に共有結合性が生じているため,純粋なイオン結合に比べ,結合エネルギーが大きくなるためと考えられています。

 今日の実験のポイントは,次の通りです。
1.塩酸に硝酸銀水溶液を加えると,塩化銀の白色沈殿ができます。この沈殿は,熱湯にも溶けません。
2.アンモニア水を加えると,塩化銀は溶けます。これは,ジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH)になるからです。
3.チオ硫酸ナトリウム溶液を加えると,塩化銀は溶けます。これは,ビスチオスルファト銀(I)酸イオン[Ag(S3−になるからです。
4.塩酸に硝酸鉛(II)水溶液を加えると,塩化鉛(II)の白色沈殿ができます。この沈殿は熱湯に溶けます。
5.Cl,Br,Iの3種類のハロゲン化銀のうち,最も感光性が大きいのは臭化銀AgBrです。ヨウ化カリウムKIはアンモニア水に溶けません。またチオ硫酸ナトリウム水溶液に少ししか溶けません。