トルエンを覚えていますね。ベンゼン環にメチル基がついた化合物です。このトルエンを混酸(濃硝酸と濃硫酸)を用いてニトロ化すると,ニトロトルエンができます。トルエンにニトロ基が入るわけです。ベンゼン環に,メチル基1つとニトロ基1つが入ったニトロトルエンには,どのような異性体が考えられるでしょうか。オルト(o-),メタ(m-),パラ(p-)の3つの異性体が考えられますね。ところが,トルエンをニトロ化すると,o-ニトロトルエンが60%,m-ニトロトルエンが3%,p-ニトロトルエンが37%生成するそうです。どれもが同じ割合でできるわけではないのです。特に,m-ニトロトルエンが3%ということは,ほとんど生成しないといってもよいですね。これは,いったいどうしてでしょうか。今日は,ベンゼン環の置換反応に関して,ある位置が選択的におこる謎を考えることにしましょう。トルエンのオルト位とパラ位が選択的に置換反応を起こすので,オルト・パラ配向といいます。今日の学習内容は,次の通りです。 (1)トルエンのオルト・パラ配向 (2)フェノールのオルト・パラ配向 (3)ニトロベンゼンのメタ配向 |
有機反応機構5 (1)トルエンのオルト・バラ配向 トルエンを混酸を使ってニトロ化する →o−ニトロトルエン60%+m−ニトロトルエン3%+p−ニトロトルエン37% ![]() |
トルエンのニトロ化を続けると,最終的にはTNT(2,4,6-トリニトロトルエン)になります。もちろん,ニトロ基は,オルト位に2個,パラ位に1個入っています。次に,フェノールで考えてみましょう。フェノールに臭素水を加えると,2,4,6-トリブロモフェノールができます。これは,付加反応ではなく,置換反応であることに注意しましょう。また,フェノールを混酸でニトロ化すると,2,4,6-トリニトロフェノール(ピクリン酸)ができます。どちらも,オルト位とパラ位で置換反応が起こっていますね。 ベンゼン環の水素原子に対する置換反応は求電子置換反応であり,反応種は求電子種,すなわち電子不足(electron poor)の反応種でしたね。例えばハロゲンの陽イオンやニトロニウムイオンNO2+などがありました。ブロム化やニトロ化は,このタイプの反応です。 では,電子不足の求電子種は,ベンゼン環のどの部分を攻撃しやすいと思いますか。 |
(2)フェノールのオルト・パラ配向 ![]() ![]() ![]() |
当然電子が豊富なところ,すなわち負の電荷をもったところに攻撃しやすいことが予想できますね。ところで,フェノールでは,ベンゼン環のどの部分が負の電荷をもっているのでしょうか。実は,共鳴という考え方によって説明できるのですが,オルト位とパラ位が,周りに比べて負の電荷を帯びている場所ということができるようです。したがって,電子不足の求電子種は,フェノールのオルト位とパラ位を選択的に攻撃するのです。トルエンも同じように説明することができます。ベンゼンを混酸でニトロ化すると,ニトロベンゼンができます。さらにニトロ化を続けると,さらに置換反応が起こってジニトベンゼンができます。そのとき,3つの異性体が考えられますが,o-ジニトロベンゼンが6%,m-ジニトロベンゼンが92%+p-ジニトロベンゼンが2%になるそうです。すなわち,先ほどとは逆で,オルト位とパラ位はニトロ化が起こりにくいことが分かります。また,ニトロ化を続けると,最終的に2,4,6-トリニトロベンゼンになります。はやり,メタ位で置換反応が起こっていますね。これをメタ配向といいます。 |
(3)ニトロベンゼンのメタ配向 ニトロベンゼンを混酸を使ってさらにニトロ化する →o−ジニトロベンゼン6%+m−ジニトロベンゼン92%+p−ジニトロベンゼン2% ![]() ![]() |
ニトロ基は,ベンゼン環の電子を引きつける働きがあるようです。そのとき,ベンゼン環のオルト位とパラ位が,周りに比べて正の電荷を帯びることになります。その結果,電子不足のニトロニウムイオンNO2+は正の電荷を避けてベンゼン環のメタ位を選択的に攻撃するのです。一置換ベンゼンの求電子置換反応における配向性は,オルト・パラ配向性とメタ配向性があるのです。主な置換基は,次のようになります。 オルト・パラ配向性…ヒドロキシル基−OH,アルキル基−R,アルコキシル基−OR,塩素や臭素−Cl,−Brなど メタ配向性…ニトロ基−NO2,シアノ基−CN,アンモニウム基−N+R3など それでは,今日の学習内容の確認です。 1.トルエンを混酸でニトロ化すると,ニトロ基はトルエンのどこにはいりますか?→オルト,パラ 2.フェノールに臭素水を反応させると,ブロモ基はフェノールのどこに入りますか?→オルト,パラ 3.フェノールを混酸でニトロ化すると,何ができますか?→ピクリン酸(2,4,6,−トリニトロフェノール) 4.ニトロベンゼンを混酸でさらにニトロ化すると,何ができますか?→2,4,6−トリニトロベンゼン これで,化学の授業はおしまいです。まもなく入試がはじまりますね。自分の夢を実現するため,入試がんばってください。検討をお祈りします。 そして,2月28日は卒業式です。卒業おめでとうございます。 ![]() |