2007年1月31日(水) 06ko1-23 I 実験12−中和滴定
 水酸化ナトリウム水溶液の濃度を知りたいと思います。どうすればよいでしょうか。
このような課題を解決するとき,中和滴定という操作を使います。中和滴定とは,酸や塩基の濃度や量を決める操作のことです。今日は中和滴定によって,水酸化ナトリウム水溶液の濃度を調べてみましょう。その前に,水酸化ナトリウムNaOH水溶液の濃度を調べるために使うシュウ酸(COOH)について,説明する必要がありますね。
   
 白い粉末であるシュウ酸二水和物の化学式は(COOH)・2HOで,モル質量は126g/molです。したがって,0.63gを使いますが,これは0.0050(5.0×10−3)gですね。このシュウ酸水溶液は100m ですから,濃度は0.0050/0.100=0.050(5.0×10−2)〔mol/〕です。したがって,この濃度のシュウ酸水溶液10m 中には,シュウ酸分子は5.0×10−2×10/1000=5.0×10−4〔mol〕含まれていることがわかりますね。
 次にシュウ酸と水酸化ナトリウムの反応を考えてみましょう。
 (COOH) + 2NaOH → (COONa) + 2HO 
ですから,シュウ酸1molに対して,水酸化ナトリウムは2mol必要であることがわかります。
 水酸化ナトリウムの濃度を mol/ ,シュウ酸と過不足なく反応した(中和した)水酸化ナトリウム水溶液の体積を とすると, c V /1000=2×5.0×10−4
したがって,  =1.0/
となります。
 また,酸と塩基がちょうど中和するとき,
 (酸の価数)×(酸の物質量)=(塩基の価数)×(塩基の物質量) 
 acVbc’V
 の関係がありましたね。
 シュウ酸は2価の酸,水酸化ナトリウムは1価の塩基です。したがって,
 2×0.050×10.0=1×c’V’
 c’=1.0/V’
 次に。使う器具について説明しましょう。中和滴定の実験では,水で濡れていてもよいもの,よくないものの区別が重要です。
  
 水で濡れていてはよくないものは,使う溶液で洗浄します。加熱して乾かすようなことは行いません。濡れていてはよくない器具は,ビュレットとホールピペットです。
    
 水で濡れていてもよい器具はメスフラスコとコニカルビーカーです。
    
 メスフラスコは水を加えるから,容器内に水があっても平気です。では,コニカルビーカーはどうしてでしょう。  

実験12 中和滴定
<溶液の調整>
1−1 シュウ酸二水和物0.63gをはかりとり,100m のビーカーに入れ,少量の蒸留水で溶かす。
1−2 1の水溶液をメスフラスコに移し,蒸留水でビーカーを2〜3回洗い,その水もメスフラスコに移す。
1−3 蒸留水をメスフラスコの標線まで加え,正確に100m にする。
(注意)溶液の濃度が一定になるように,メスフラスコに栓をして,何度もひっくり返す。
1−4 与えられた水酸化ナトリウム水溶液を使用する。


<ビュレットの洗浄>
2−1 ビュレットの上部に漏斗をつけ,水酸化ナトリウム水溶液を10m の目盛りまで入れる。
(注意)漏斗の足をビュレットノ壁面に沿って回しながら,水酸化ナトリウム水溶液を入れる。
2−2 ビュレットの下に100m のビーカーを置き,ビュレット内の水酸化ナトリウム水溶液をすべて流し出す。
2−3 ビュレットの上部に漏斗をつけ,水酸化ナトリウム水溶液をほぼいっぱい入れる。
(注意)漏斗はビュレットからはずしておく。
2−4 ビュレットの先端部の空気を抜く。


<ホールピペットの洗浄>
3−1 ホールピペット(10m )に約5m シュウ酸水溶液を吸い上げる。
3−2 ホールピペットを水平より,やや開口部部が下になるようにしてホールピペットを回転させ,シュウ酸溶液で洗浄する。
3−3 ホールピペットをたてて,シュウ酸水溶液をすべて出す。
(注意)最後一滴は,開口部を指で押さえ,ホールピペットの膨大部を握って出す。ホールピペット内の空気が膨張し,先についている水溶液が落ちる。ただし,安全ピペッターをつけているときは,ピペッターを押さえて出す。
 準備ができました。いよいよ滴定です。実験中は,必ず保護眼鏡を着用しましょう。
   

<中和滴定>
4−1 シュウ酸水溶液をホールピペットで正確に10m 取り,コニカルビーカーに入れ,フェノールフタレイン溶液を1〜2滴加えてから,回転子を入れる。
4−2 滴下前のビュレットの液面の目盛りを0.01m の単位まで正確に読む。
(注意)ビュレットの青色の線の切れ目を基準にするとよい。
4−3 コニカルビーカーをスターラーの上にのせ,溶液をかき混ぜながら水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ滴下する。水溶液の赤色が消えにくくなったら,注意して1滴ずつ滴下する。溶液全体がうすい赤色になれば滴下をやめる。
(注意)しばらくすると,空気中の二酸化炭素が溶けて,赤色が消える。
4−4 滴下後のビュレットの液面の目盛りを0.01m の単位まで正確に読む。
(注意)ビュレットの青色の線の切れ目を基準にするとよい。
4−5 コニカルビーカーの中の水溶液を捨て,コニカルビーカーを水道水で洗った後,蒸留水で内側を洗い,操作1〜4をさらに3回行う。

 
<結果のまとめ>
 測定結果を表に記入し,滴定に用いた水酸化ナトリウム水溶液の平均の体積を求める。

1回目 2回目 3回目 4回目 平均
滴定前の目盛り    m    m    m    m   −
滴定後の目盛り    m    m    m    m   −
滴定に要した体積    m    m    m    m    m
(注意) 他より大きくずれているデータは省いて平均を求めること。
 実験結果を確認しましょう。

 これはあくまでも例です。 
結果の例 1回目 2回目 3回目 平均値
滴定前の目盛り 1.70m 0.58m 2.55m   −
滴定後の目盛り 11.70m 10.58m 12.57m   −
滴定に要した体積 10.01m 10.00ml 10.02m 10.01m

 それでは,考察です。

 シュウ酸水溶液の濃度は,
シュウ酸二水和物(COOH)・2HOの式量は126だから,
物質量〔mol〕=0.63〔g〕/126〔g/mol〕
濃度〔mol/ 〕=0.63〔g〕/126〔g/mol〕×1000/100
=5.0×10
−2
 水酸化ナトリウム水溶液の濃度は,
結果の例の平均値は10.01m だから,
水酸化ナトリウム水溶液の濃度 〔mol/ 〕とすると,
2×5.0×10−2×10.00=1××10.01
=2×5.0×10−2×10.00/10.01=0.10〔mol/


 ビュレットやホールピペットは,
内部が水滴でぬれていると,加えた水溶液の濃度が変わる。したがって,用いる水溶液で内部を洗う。
 コニカルビーカーは,
水でぬれていても,加えたシュウ酸の物質量は変わらない。中和で問題になるのは,酸の物質量,すなわち水素イオンの物質量である。
 撹拌していると,フェノールフタレインの色が消えるのは,
空気中の二酸化炭素が溶け込み,水溶液のpHを下げるからである。


 



 ビュレットの最小目盛りは0.1m であるが,その1/10を目分量で読む。したがって,0.01m の位まで測定することができる。
 フェノールフタレインの変色域はpH8.0〜9.8であり,pH<8.0では無色,pH>9.8では赤色になる。
 今日の実験のポイントは,次の通りです。
1.濡れていてはよくない器具は,ビュレットとホールピペットです。使う溶液で洗浄します。
2.濡れていてもよい器具は,メスフラスコとコニカルビーカーです。
3.ホールピペットの最後一滴は,開口部を指で押さえ,膨大部を握って出します。ただし,安全ピペッターをつけているときは,ピペッターを押さえて出します。