2006年9月7日(木) 06ko2-20 炭素とケイ素の単体と化合物
 今日は14族典型元素の炭素について,勉強しましょう。炭素の価電子は何個でしたか?4個でしたね。この価電子がすべて不対電子であるため,炭素原子は4個の他の原子と共有結合ができるのです。
 炭素は石炭や木炭の成分として古くからよく知られた元素であり,特定の発見者はいないようです。英語名carbonは,フランスのトモルボーがラテン語の木炭carboにちなんだcarboneを1787年に提唱したことに由来するそうです。ドイツ語ではKohlenstoff(炭の物質)とよび,日本語の炭素と同じです。
  
 今日の学習内容は,次の通りです。
(1)炭素族元素
(2)炭素の単体
(3)炭素の化合物
(4)ケイ素の単体
(5)ケイ素の化合物
 最初は,炭素族元素です。
  

12 炭素とケイ素の単体と化合物
(1)炭素族元素
  carbon 炭(ラテン語)
 Si silicon ケイ砂(ラテン語)
 価電子が4個→他の原子と共有結合
 C60分子の存在は,豊橋技術大学の大沢映二教授が1970年に最初に予想しました。π電子が3次元的に移動できる分子を考案している中で予想したものです。しかし,C60は1985年に英米の化学者H.W.クロート(サセックス大学),R.E.スモーリー(ライス大学)の共同研究により実際に発見されました。二人はクラスターについて研究し,一連の物質をフラーレンとよびました。
 クラスターとは,原子が数個〜数百個集まった集合体のことで,結晶や個々の原子・分子とは異なった性質を示します。真空中で黒鉛に強力なレーザーを照射すると炭素原子となって蒸発しますが,真空中で炭素原子が集まると共有結合の分子すなわち炭素クラスターができます。クロートたちは,炭素蒸気中にごく微量のC60とともにC70を見出し,サッカーボール・ラグビーボール型の分子を想定しました。得られたクラスターは微量でしたが,その大部分はC60であったといいます。
 クロートたちはC60を検出したものの,これを単離することはできませんでした。C60をグラム単位で取り出すことに成功したのは1990年で,W.Krätschmer(マックスプランク核物理学研究所),D.R.Huffman(アリゾナ大学)の共同研究によります。彼らは,ヘリウムガス中で黒鉛に電流を通じてススをつくり,その中のベンゼンに溶ける成分をカラムクロマト法で分離して取り出しました。
 C60の正確な分子構造は,5Kに冷却した結晶の中性子回折により求められました。そして,12個の五角形と20個の六角形からなるサッカーボール型であることが確定しました。C60分子の直径は約0.7nmで,分子内に金属イオンや小さい分子を取り込む余地が十分にあります。
 1996年のノーベル科学賞は,フラーレンC60の発見に対して,サセックス大学のクロート(英),ライス大学のスモーリーと カール(米)の三教授に与えられました。
 C60フラーレンは,ベンゼンに溶けて赤色の溶液になります。比較のために,少量の活性炭をベンゼンに加えてみましょう。溶けません。
      

(2)炭素の単体
 
同素体…ダイヤモンド,黒鉛,フラーレン
<ダイヤモンド>
 共有結合の結晶で,C原子が他の4個のC原子と共有結合
 →
正四面体型
 最も硬い透明な結晶
 融点が高く,屈折率が大きい
 研磨剤や切削材

 

<黒鉛>
 共有結合の結晶で,C原子が他の3個のC原子と共有結合
 →
平面構造
 C原子の価電子1個が,平面状分子に沿って移動
 →電気伝導性,金属光沢
 灰黒色結晶で,軟らかい
 電極や鉛筆の芯などに利用

 

<フラーレン>
 C60,C70などの分子式をもった球状分子
 現在,性質の研究が進んでいる

 
 炭素の酸化物には,一酸化炭素や二酸化炭素があります。一酸化炭素の毒性が強いことは有名ですから,たぶん知っていたでしょう。一酸化窒素は血液中のヘモグロビンと強く結合する性質があります。酸素より1000倍も強いといわれています。結合力ですね。一酸化窒素がヘモグロビンに結びついてしまえば,酸素を体内に運ぶことができなくなります。
     
 二酸化炭素は赤外線を吸収しやすいので,大気中の二酸化炭素は熱を保持する性質があるといわれています。
        

(3)炭素の化合物
<一酸化炭素>
 無色,無臭,毒性が強い
 二酸化炭素を炭素で還元
 CO+C→2CO
 ギ酸を濃硫酸と加熱
 HCOOH→HO+CO


<二酸化炭素>
 無色,無臭
 炭酸塩に希塩酸を加える
 CaCO+2HCl→CaCl+HO+CO
 石灰石を熱分解
 CaCO→CaO+CO
 水溶液は弱い酸性
 石灰水に通すと白濁
 Ca(OH)+CO→CaCO+H
 CaCO+HO+CO→Ca(HCO)



<有機化合物>
 1828年 ウェーラー(ドイツ)
 無機化合物であるシアン酸アンモニウムから有機化合物である尿素を合成
 NHOCN→HNCONH
 炭素を含む化合物(CO,CO,シアン化物,炭酸塩を除く)

 有機化合物は,無機の後で勉強します。中学校でも有機物は出てきましたね。そのときは。炭素を含む物質と紹介されています。しかし,有機化合物の定義は意外と難しいのです。
 もともと有機化合物は生物によって生成されるものと考えていました。ところが,1828年にドイツのウェーラーは,シアン酸アンモニウムが加熱によって尿素に変わることを発見したのです。たぶん,この発見は偶然だったと思います。なぜなら,ウェーラー自身の驚きは大変なものだったのです。彼の恩師であるベルセーリウスに対する報告でもわかります。
 I must tell you that I can make urea without the use of kidneys,either man or dog.
Ammonium cyanete is urea.
 しかし,彼はドイツ人ですから,英語の手紙は書かなかったでしょうね。
 次にケイ素について勉強しましょう。ケイ素は,地殻では酸素についで多く存在し,いろいろな酸化物やケイ酸塩が石英,長石,水晶,雲母などの鉱物のかたちで産出されます。
 ケイ素の元素名siliconはラテン語のケイ砂silex(硬い石,火打ち石)に由来するようです。単体のケイ素は天然にはありにません。単体は,1823年スウェーデンのベルセーリウスがフッ化ケイ素を金属カリウムで還元することにより単離しました。純粋な結晶は,フランスのドービルが1854年につくったといわれています。現在最も純度の高いケイ素は,テンナインとかイレブンナインとかいわれています。テンナインとは,99.99999999%のことですね。このテンナインのケイ素1gにケイ素分子が約2×1022個含まれています。するとケイ素1g中の不純物の数は,もしケイ素と同じ質量とすれば2×1012個ということになります。といっても,ピンときませんね。
 ケイ素といえば半導体ですね。ところで半導体って何なのでしょうか?銅のように電流をよく通すものを導体といい,プラスチックのように通しにくいものを絶縁体といいますね。この中間にあるものが半導体で,ケイ素以外にはゲルマニウムも半導体です。半導体の結晶中では,共有結合の一部が切れて自由電子が結晶中に飛び出し,電子が飛び出した後にはホール(正孔)といってあたかも正の電荷をもつかのようにふるまいます。このような半導体にごく微量の不純物を加えると,自由電子やホールの数を制御して電気伝導性を大きく変えることができるのです。
  


(4)ケイ素の単体 
 岩石・鉱物の成分元素として,酸素に次いで多い
 天然に単体は存在しない
 ケイ砂を融解し,コークスで還元
 SiO+2C→Si+2CO
 結晶は金属光沢
 電気伝導性は金属と非金属の中間→
半導体
 塩基と反応して塩をつくる
 Si+2NaOH+HO→NaSiO+2H

 
 二酸化ケイ素SiOは酸性酸化物であり,水酸化ナトリウムなどの塩基と反応して,ケイ酸イオンが立体的にならんだ骨格構造をもつケイ酸ナトリウムNaSiOとなります。
 ケイ酸ナトリウムを水中で加熱するとナトリウムが水酸化物イオンと置換した水ガラスができます。
 水ガラスを乾燥するとケイ酸mSiO・nHOになり,これをほぼ完全に脱水したものが乾燥剤のシリカゲルです。シリカゲルは表面積が大きいので,表面には水分子だけでなく,気体や色素などを強く吸着することができます。

(5)ケイ素の化合物 
<二酸化ケイ素>
 石英,ケイ砂,水晶などの主成分
 フッ化水素酸には溶ける
 SiO+6HF→HSiF(ヘキサフルオロケイ酸)+2H
 塩基と反応
 SiO+2NaOH→NaSiO+H
 SiO+NaCO→NaSiO+CO

 

<ケイ酸ナトリウム>
 ガラス状の固体
 水を加えて加熱すると,粘性の大きい液体→水ガラス
 塩酸を加えると,半透明コロイド状のケイ酸になる
 NaSiO+2HCl→HSiO+2NaCl

<ケイ酸>
 弱酸
 加熱して脱水→シリカゲル

 
 それでは実験をみてもらいましょう。
 粉末のケイ素0.25gに6mol/ のNaOHaq5m を加え加熱すると,やがて激しく反応します。このとき水素が発生します。次に3mol/ のHCl5m と水10m 加えてろ過します。このろ液に少しずつ3mol/ のHClを4m 加えると,ゲル化します。
 また,水でうすめた水ガラスにフェノールフタレイン溶液を加え,3mol/ のHClを加えていってもゲル化します。このゲルは,どうしてもさわりたい衝動に駆られます。
 陶磁器,ガラス,ほうろう,セメントなどは,私たちの生活に関係の深いものです。そのような製品は,ケイ砂塩工業または窯業でつくられます。
   

 炭素の化合物は,非常に種類が多いのが特徴です。そして,その大部分は有機化合物です。有機化合物については,種類が多いので,構造や官能基で分類します。
 人類は,大昔石器を使っていました。次に,金属を使いました,さらにプラスチックを使いました。そして,再び石器に戻ろうとしています。それが,セラミックスです。セラミックス製品は,あなたのまわりにもきっとあるでしょう。
 それでは,今日の学習内容の確認です。
1.炭素の同素体を3種類上げなさい。
2.ギ酸を濃硫酸と加熱すると,何が発生しますか?
3.炭酸塩に希塩酸を加えると,何が発生しますか?
4.二酸化炭素を石灰水に通じると,白濁する。この反応を,化学反応式で示しなさい。また,二酸化炭素を通じ続けると,白濁が消えます。この反応を,化学反応式で示しなさい。
5.1828年ドイツのウェーラーは,シアン酸アンモニウムから何を合成しましたか?
6.石英や水晶,ケイ砂の主成分は何ですか。
7.二酸化ケイ素が何に溶けるとヘキサフルオロケイ酸HSiFになりますか?
8.水ガラスに塩酸を加えると,半透明ゼリー状のものが生じます。これを何といいますか?
9.8を加熱して脱水すると乾燥剤や吸着剤として利用されるものができます。これは何ですか?


1.ダイヤモンド,黒鉛,フラーレン
2.酸化炭素
3.二酸化炭素
4.Ca(OH)+CO→CaCO+H
  CaCO+HO+CO→Ca(HCO)
5.尿素
6.二酸化ケイ素
7.フッ化水素酸
8.ケイ酸
9.シリカゲル