高III化学2007年8月20日(月) 07ko3-37 II 実験19−タンパク質
 卵白は,主に卵アルブミンと卵グロブリンの2種類のタンパク質を含んでいます。卵白を使って,タンパク質の性質を調べてみましょう。この実験では,卵白を精製水で6倍にうすめ,NaClを少量加えた水溶液を使います。NaClを加える理由は,水に不要なグロブリンを溶かし,溶液を透明にするためです。
   
思えているかな?
1.アミノ酸にうすいニンヒドリン水溶液を加えて温めると,溶液は何色になりますか?
赤紫色(ヒスチジンでは青色)
2.1の反応を何といいますか?
ニンヒドリン反応

実験19 タンパク質
<窒素・硫黄の検出>
1 卵白水溶液5mL を試験管にとり,粒状の水酸化ナトリウムNaOHを2粒を加えて加熱する。卵白水溶液が黄色くなったら湿らせたpH試験紙や濃塩酸をつけたガラス棒を試験管の口に近づける。
2 操作1の試験管内の溶液に,酢酸鉛(II)Pb(CHCOO)水溶液を数滴加える。

  
 窒素と硫黄の検出の実験結果を確認しましょう。
卵白水溶液にNaOHを2粒加え加熱すると,アンモニア臭がします。湿らせたpH試験紙は塩基性を示し,濃塩酸をつけたガラス棒を試験管の口に近づけると,塩化アンモニウムNHClの白煙がみられます。発生した気体はアンモニアにまちがいありません。このことより,卵白には窒素元素が含まれていることがわかりますね。
 操作1の水溶液に酢酸鉛(II)Pb(CH
COO)水溶液を加えると,褐色の沈殿がみられます。この沈殿は硫化鉛(II)PbSと考えることができますね。硫化鉛(II)は,本来黒色の沈殿ですが,この反応では褐色の沈殿になります。したがって,卵白には硫黄元素が含まれていたことがわかります。硫黄が含まれているアミノ酸は,システインやメチオニンなどです。
    

<変性>
3 4本の試験管に卵白水溶液を2mL ずつとる。各水溶液について,次の操作を行う。
4 卵白水溶液を2mL に濃塩酸を1滴ずつ変化がみられるまで加える。これに蒸留水を加えて2倍に薄めてよく振り,もとの状態にもどるか調べる。
5 卵白水溶液を2mL にエタノールCOHを加える。
6 卵白水溶液を2mL に温度計を入れ,ビーカーの水に浸す。ビーカーの水を加熱し,卵白が凝固する温度を調べる。
7 卵白水溶液2mL に酢酸鉛(II)
Pb(CHCOO)水溶液を1滴加える。
   
 実験結果を確認しましょう。
変成の実験結果を確認しましょう。
 卵白水溶液に濃塩酸を1滴ずつ加えると,白く凝固します。これに精製水を加えて2倍にうすめても,元の状態には戻りません。このことより,変性は不可逆的であることがわかりますね。
 卵白水溶液にエタノールを加えても,白く凝固します。
 卵白水溶液を加熱すると,60〜65℃で白く凝固します。しかし,水溶液全体が凝固するのではありません。卵白を水で6倍にうすめた水溶液を使っているからです。ゆで卵のような状態になると思っていたら大違いですから,注意して下さい。白いもやもやとしたものが見えるのです。
  
 また,酢酸鉛(II)Pb(CHCOO)水溶液を加えても白濁します。鉛(II)イオンPb2+が原因です。

<呈色反応>
8 卵白水溶液を3本の試験管に2mL ずつとる。また,ゼラチン水溶液を3本の試験管に2mL ずつとる。各水溶液について,次の操作を行う。
9 卵白およびゼラチン水溶液各1本ずつに1mol/L の水酸化ナトリウムNaOH水溶液を1mL 加え,さらに硫酸銅(II)CuSO水溶液を1滴ずつ加えて振る。
10 卵白およびゼラチン水溶液各1本ずつに,濃硝酸HNOを5〜6滴加えて加熱する。冷却後,6mol/L の水酸化ナトリウムNaOH水溶液を1mL 加える。
11 卵白およびゼラチン水溶液各1本ずつに,ニンヒドリン水溶液を数滴加えて加熱する。

 実験結果を確認しましょう。
卵白水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加え,さらに硫酸銅(II)水溶液を1滴加えると,水溶液は赤紫色に変化します。これがビウレット反応ですね。もちろんゼラチン水溶液も赤紫色に変化します。
 卵白水溶液に濃硝酸を加えて加熱すると,溶液が黄色に変化します。さらにさらに水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にするとすると,溶液は橙色になります。これがキサントプロテイン反応ですね。キサントプロテイン反応は,ベンゼン環のニトロ化が原因ですから,ベンゼン環を含むアミノ酸,すなわち,フェニルアラニン,チロシンやトリプトファンが含まれていることがわかりますね。
    
 爪に濃硝酸をつけて見ましょう。爪が黄色になれば,あなたの爪にはフェニルアラニン,チロシンやトリプロファンが含まれていることになります。もし黄色にならなければ,あなたの爪には,それらのアミノ酸が含まれていません。すなわち,ヒトの爪ではないことになります。もしかしてエイリアンだったりして…。
  
 ゼラチン水溶液に濃硝酸を加えると白濁し,加熱すると白く凝固します。水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性にしても変化がみられません。
 卵白水溶液にニンヒドリン水溶液を数滴加えて加熱すると,赤紫色に変化します。これがニンヒドリン反応ですね。ニンヒドリン反応はアミノ酸でも見られます。このことより,遊離したアミノ基−NHをもっていることがわかりますね。ゼラチン水溶液では,ニンヒドリン反応は見られません。
 これから卵を食べるときには,今日の実験を思い出して下さい。ビウレット反応,キサントプロテイン反応,ニンヒドリン反応,変性などですよ。
 

 それでは考察です。 

 操作1で発生した気体に濃塩酸をつけたガラス棒を近づけたときに起こる変化を化学反応式で表すと,
NH + HCl → NHCl(白煙)
 卵白に含まれるタンパク質は,
ビウレット反応は,トリペプチドに陽性。キサントプロテイン反応は,チロシンやフェニルアラニンのようにベンゼン環をもつアミノ酸を含むタンパク質に陽性。ニンヒドリン反応はタンパク質やアミノ酸に対して陽性で,遊離したアミノ基とカルボキシル基がある場合に起こる。したがって,チロシンまたはフェニルアラニンなどのベンゼン環を有するアミノ酸が含まれ,遊離したアミノ基,カルボキシル基が存在するトリペプチド以上のポリペプチドと考えられる。
 爪に濃硝酸をつけると黄色になるのは,
爪もタンパク質からできていて,ベンゼン環をもつアミノ酸を含んでおり,キサントプロテイン反応を起こす。
 ゼラチンを構成するアミノ酸の種類は
ベンゼン環を含むアミノ酸や硫黄を含むアミノ酸の含量が少ないと考えられる。



 卵アルブミンとゼラチンの違い
タンパク質 硫黄を含むアミノ酸 ベンゼン環をもつアミノ酸
卵アルブミン 8.7% 5.4%
ゼラチン 1.1% 0.4%
 今日の実験のポイントは,次の通りです。
確認しよう
1.卵白水溶液に固体のNaOHを加えて加熱すると,アンモニアが発生します。これにより,窒素元素の確認ができます。また,冷えてから酢酸鉛(II)水溶液を加えると,褐色の沈殿が生じます。これにより,硫黄元素の確認ができます。
2.卵白水溶液に濃塩酸やエタノールを加えると,白く凝固します。また,加熱しても凝固します。これをタンパク質の変性といいます。変性は,もとには戻らないので,不可逆的といえます。
3.タンパク質には,特有な呈色反応があります。Cu2+の錯イオンが生成して赤紫色になるのがビウレット反応です。また,濃硝酸を加えて加熱すると黄色になるのがキサントプロテイン反応です。これは,ベンゼン環のニトロ化のために起こる反応です。
4.同じタンパク質でも,卵アルブミンとゼラチンでは,構成するアミノ酸の種類が違うことがわかります。