次に,塩の加水分解について考えてみましょう。中学校の理科の実験で,炭酸水素ナトリウムNaHCO3や炭酸ナトリウムNa2CO3の水溶液が塩基性を示したことを覚えていますか?その理由がやっと説明できるようになります。
炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムのように弱酸と強塩基から生じた塩や,塩化アンモニウムNH4Clのように強酸と弱塩基から生じた塩が,水と反応してもとの弱酸や弱塩基を生じ,水溶液が弱い塩基性や酸性を示すことを,塩の加水分解といいます。どうして,このようなことが起こるのでしょうか。
 酢酸ナトリウムCH3COONaは酢酸(弱酸)と水酸化ナトリウム(強塩基)からできた塩ですね。この酢酸ナトリウムの水溶液は酸性を示します。酢酸ナトリウムは塩ですから,水溶液中ではほぼ100%電離して,ナトリウムイオンと酢酸イオンに分かれ,それぞれが水和イオンになっていると考えるとよいでしょう。また,溶媒である水は,ごくわずか電離していることも知っていますね。そこで,水溶液中には,合計4種類のイオンが存在していることになります。
酢酸イオンと水素イオンは結びつくと酢酸分子です。この酢酸分子は,もちろん電離して水素イオンと酢酸イオンに別れます。そこで,これが重要なんですが,酢酸分子,水素イオン,酢酸イオンの3種類の量関係はどのようになっているのでしょうか。
酢酸の電離
0.10mol/Lの酢酸水溶液の電離度αは0.016
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CH3COOH |
⇔ |
H+ |
+ |
CH3COO− |
| 電離前 |
0.10mol/L |
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0mol/L |
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0mol/L |
| 電離後 |
0.0984mol/L |
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0.0016mol/L |
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0.0016mol/L |
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これでわかるように,大部分が酢酸分子なのです。ということは,水溶液中の水素イオンH+と酢酸イオンCH3COO−が結びついて,酢酸分子CH3COOHになりやすいことを意味しています。したがって,水溶液中の水素イオンH+と酢酸イオンCH3COO−が減少します。
一方,ナトリウムイオンNa+と水酸化物イオンOH−が結びつくと水酸化ナトリウムNaOHです。これは強塩基ですから,電離度αはほぼ1でしたね。すなわち,水溶液中のナトリウムイオンと水酸化物イオンの濃度は変化しないということです。
すなわち,水素イオンH+の数が減少して,水酸化物イオンOH−の数が変わらない。すると,[H+]<[OH−]の関係が成り立ちますから,水溶液は塩基性を示すことになるのです。
塩化アンモニウムNH4Cl水溶液は酸性を示します。これを説明することはできますか?
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