08ko-46 第46章 酸素・硫黄の単体と化合物
 この章では,16族元素について学習します。16族元素は酸素族元素ともいい,酸素と硫黄が代表的な元素です。また,酸素と硫黄の化合物の1つが二酸化硫黄です。
思えているかな?
1.空気中の成分の中に物質と結びつく気体があることを発見し,それを酸素と名付けたのは誰ですか?
ラボアジェ
2.酸素と硫黄の化合物は何ですか?
二酸化硫黄SO
 酸素の発見はプリーストーリーというイギリス人といわれていますが,1779年にフランスのラボアジェによって「酸素」と命名されています。名前の由来は,「酸の素」という意味です。ラボアジェは,酸化物は酸と考えていたようです。
 
 硫黄は天然に産出するので,有史以前から知られていたようです。1777年にラボアジェが元素として分類しています。どちらの元素も,ラボアジェと関係が深いのですね。
  
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)酸素族元素
(2)オキソ酸
(3)二酸化硫黄
(4)硫酸
(5)硫化水素
 では,酸素族元素からはじめましょう。

第46章 酸素・硫黄の単体と化合物
(1)酸素族元素 
 O  oxgen 酸っぱい+素
sulfur ラテン語のイオウ
Se selenium ギリシア語で月
Te tellurium ラテン語で地球
 価電子が6個→2価の陰イオン,他の原子と共有結合
 セレンとテルルの名前について,少し解説をしましょう。
 
1782年にオーストリアのミュラー,そして1783年にルーマニアのライヘンシュタイン男爵によって,新しい元素らしいものが発見されました。telluriumの語源tellusはラテン語で地球という意味であるとともにローマ神話で大地の女神の名でもあり,1798年に新元素であることを確認したクラップロートによって命名されました。彼は,10年前にすでにウランを発見し,天の神の名をとって命名された新惑星ウラノス(天王星)にちなんで名づけており,テルルはこれに対抗して名づけたようです。
 
 セレンはイオウとテルルのかげに隠れていたために未発見のままでしたが,1817年になってスウェーデンの化学者ベルセーリウスとガーンにより,硫酸製造のため硫黄を燃焼した後に生じた沈殿物から,テルルに似た未知の元素として発見されました。その名前は,ラテン語の地球(tellus)がテルルの語源に用いたのに対して,ギリシャ語の月(selene)にちなんで,seleniumと命名されました。
 
 非金属の酸化物の多くは酸としてはたらくので酸性酸化物といいます。この非金属元素の酸化物と水との反応で生じる酸は,ほとんどが分子中に酸素原子を含むオキソ酸(酸素酸)です。

(2)オキソ酸
 分子中に酸素原子を含む酸…
オキソ酸
 
同じ周期では元素の陰性が強いほど強い酸
 (例)硫酸HSO>リン酸HPO
 
分子中の酸素原子の数が多いほど強い酸
 (例)過塩素酸HClO>塩素酸HClO>亜塩素酸HClO>次亜塩素酸HClO

   次は二酸化硫黄です。
 
 二酸化硫黄は亜硫酸ガスともよばれ,硫黄や硫化物を燃やすとできます。
 刺激臭のある無色の気体で,湿った空気中で発煙しやすく,水に比較的よく溶けます。硫黄を燃やすと,白い煙が見られますが,二酸化硫黄は無色の気体です。間違わないように気をつけてください。
 二酸化硫黄が水に溶けると弱い酸性を示します。これは,水と反応すると亜硫酸ができるからです。
 二酸化硫黄の性質で重要なのは,還元性と漂白作用です。ただし,二酸化硫黄は酸化剤としてはたらくこともあるので要注意です。以前に,酸化還元のところで,過酸化水素が酸化剤としてはたらくときと,還元剤としてはたらくときがあることを学びましたね。覚えていますか。漂白作用は,ハロゲンのところでも出てきましたので,あわせて整理しておいてください。
 この講座では,ときどき⇔の記号が出ると思います。化学反応式で,酢酸の電離などのように,反応がどちらにも進む場合の反応式には,→と←を上下に重ねた記号を使います。しかし,残念ながら,この講座ではその記号が使えません。仕方がないので,⇔で代用します。あくまでも,この講座だけの約束ごとですので,注意してください。

(3)二酸化硫黄 
<製法>
 硫黄の燃焼
 S+O→SO
 亜硫酸水素ナトリウムに希硫酸を加える
 NaHSO+HSO→NaHSO+HO+SO
 銅に濃硫酸を加えて加熱
 Cu+2HSO→CuSO+2HO+SO


<水溶液>
 弱い酸性
 SO SO
 SO HSO
 HSO SO2−


<還元性>
 還元剤の半反応式; SO+2HO→SO2−+4H+2e
 ヨウ素との反応
 酸化剤の半反応; +2e→2I
 化学反応式; SO+2HO+I→2HI+HSO
 過マンガン酸カリウムとの反応
 酸化剤の半反応式; MnO+8H+5e→Mn2++4H
 化学反応式; 5SO+2HO+2KMnO→KSO+2MnSO+2HSO

<酸化剤としてはたらくとき>
 酸化剤の半反応式; SO+4H+4e→S↓+2H
 硫化水素との反応
 還元剤の半反応式; S→S+2H+2e
 化学反応式; SO+2HS→3S↓+2H
 次に,硫酸について説明しましょう。
 
 硫酸は,粘性の強い無色の液体です。硫酸をつくるためには,二酸化硫黄から三酸化硫黄にする必要があります。その反応では,酸化バナジウム(V)という触媒を使います。触媒については,詳しくは化学IIで学びます。いまは,反応を速くする効果があるものとしておきましょう。三酸化硫黄を水に溶かすと硫酸になります。
 希硫酸はよく使うことがありますが,濃硫酸を使う機会は少ないですね。水との反応で激しく発熱しますから,濃硫酸を水でうすめるときは,特に注意が必要です。水に濃硫酸を少しずつ加えながらうすめます。誤ると,事故につながります。

  

(4)硫酸 
<製法>
 S+O→SO
 2SO+O→2SO
 触媒;酸化バナジウム(V)V
 SO+HO→HSO


<性質>
 無色油状の粘性の大きい重い液体(密度1.83g/cm
 沸点が高い(338℃)
 吸湿性が強い→乾燥剤
 脱水作用→炭化
 熱濃硫酸には強い酸化作用がある
 HSO+2H+2e→SO+2H

 硫化水素は,火山や温泉の雰囲気を漂わせる臭いです。
 
 実際に,火山地帯の噴出ガスやある種の温泉に含まれているようです。いわゆる腐卵臭に似た悪臭で,有毒です。ですから,実験室では,ドラフトの中で発生させ,その水溶液を使って実験を行います。くれぐれも,硫化水素を発生させているとき,ドラフトの中に頭を入れないようにしてください。
   
 硫化水素のポイントは,還元性と金属元素の硫化物です。硫化水素は水に比較的溶け,水溶液は弱い酸性を示します。水と反応すると,オキソニウムイオンができることで説明できますね。硫化水素が電子を放出すると,硫黄ができます。したがって,硫化水素が酸化されると,溶液は白く濁ります。硫黄の微粒子ができるからです。
 最後に,金属元素の硫化物の話をしましょう。塩化物イオンの検出には硝酸銀水溶液を使いますね。その理由は,塩化銀は難溶性の塩だから,沈殿が生じるのです。塩化銀は白色沈殿ですね。同じ色の塩では,硫酸バリウムなどが重要です。一般に,硫化物も難溶性のものが多く,沈殿になります。
 硫化物は,pHによって沈殿のしかたが変わります。また,沈殿は黒色が多いのですが,それ以外に白色や黄色などもあります。したがって,これらから,金属の陽イオンを調べる重要な手がかりになるのです。

(5)硫化水素 
<製法>
 FeS+HSO→FeSO+H

<水溶液>
 弱い酸性
  HS
 HS 2−

<還元性>
 還元剤の半反応式; S→S↓+2H+2e
 化学反応式; S+H→S↓+2H

<金属イオンとの反応>
 Pb2+ 2− PbS (黒色)
 Zn2+ 2− ZnS (白色)
 Fe2+ 2− FeS (黒色)
 Cu2+ 2− CuS (黒色)
 2Ag 2− Ag (黒色)
 二酸化硫黄も硫化水素も,ともに水に比較的溶け,水溶液は酸性を示します。また,両者とも還元性を示します。しかし,二酸化硫黄が硫化水素と反応するときは,二酸化硫黄は酸化剤としてはたらきます。その点を注意してください。
 それでは,この章の学習内容を確認しましょう。
確認しよう
1.分子中に酸素原子を含む酸を何といいますか?
2.塩素酸と次亜塩素酸では,どちらが強い酸ですか?
3.硫黄の同素体には,どのようなものがありますか?
4.二酸化硫黄が水に溶けると,その一部は何になりますか?
5.二酸化硫黄を酸化して三酸化硫黄にするとき,用いる触媒は何ですか?
6.濃硫酸は有機化合物中の水素原子と酸素原子を水分子として取り除くはたらきがあります。何といいますか?
7.硫化水素のつくりかたを説明しなさい。
8.硫化水素が水に溶けると何性を示しますか?
9.硫化水素は酸化剤としてはたらきますか,還元剤としてはたらきますか?
10.硫化物の沈殿の中で白色のものは何ですか?


1.オキソ酸
2.塩素酸
3.斜方硫黄,単斜硫黄,ゴム状硫黄
4.亜硫酸HSO
5.酸化バナジウム(V)
6.脱水作用
7.硫化鉄(II)に希硫酸または希塩酸を加える。
8.弱い酸性
9.還元剤
10.硫化亜鉛ZnS