08ko-069 第69章 実験−アルコール
 この章では,アルコールの性質を調べる実験を紹介します。アルコールとは物質名ではなく,炭化水素の水素原子−Hをヒドロキシ基−OHで置換した形の化合物の総称名です。
  
思えているかな?
1.炭素数1のアルコールは何ですか?
メタノール
2.炭素数2のアルコールは何ですか?
エタノール
3.炭素数3のアルコールは何ですか?
1-プロパノールと2-プロパノール
 4種類のアルコール,メタノールCHOH,エタノールCOH,1-プロパノールCOH,1-ブタノールCOHの性質を調べましょう。
 まず色,におい,そして水への溶解性の観察です。メタノールは毒性のあるアルコールです。メタノールのにおいを調べるのは避けましょう。

第69章 実験−アルコール
<炭素数の増加と性質の違い>
1 3本の試験管にエタノールC
OH,1-プロパノールCOH,1-ブタノールCOHを1mLずつ入れ,色,においを調べる。
2 1の3本の試験管に,それぞれ水を3mLずつ加えてよく振り,溶解性を調べる。


名称 エタノール 1-プロパノール 1-ブタノール
示性式





におい


水への溶解性


 エタノール,1-プロパノールは,任意の割合で水に溶解します。しかし,1-ブタノールは水には少量溶ける程度で,1-ペンタノールは微量しか溶けません。これは,どうしてでしょう。アルコールは水と水素結合するヒドロキシ基−OHがありますね。これは親水基です。しかし,疎水基の炭化水素基が大きくなると,水に溶けにくくなるのです。
 ところで,ナトリウムは水と激しく反応して水素を発生することを知っていますね。
 2Na+2HO→2NaOH+H↑ 
 では,アルコールではどうでしょうか。
 1-ブタノールは反応が遅いから,ナトリウムが残っているかもしれません。念のために,実験後試験管に水を加えてナトリウムをすべて反応させてから後片付けをしてください。 

<アルコールとナトリウムとの反応>
3 3本の試験管に水,エタノール,1-ブタノールを2mLずつ入れ,米粒大のナトリウムを入れて反応のようすをみる。気体が発生すれば,スクリュー管の蓋を試験管の口にのせ,発生する気体が十分に集まったら,管口にマッチの火を近づける。

注意 ナトリウムを扱うときは乾いたピンセットを用いること。また,すべてのナトリウムが反応したことを確認してから,残った液を捨てること。
 
 
 発生した気体は水素ですね。反応の激しさは,
 水>エタノール>1-ブタノール 
の順になります。
 次は,エタノールの検出方法の実験です。この実験では,メタノールも使います。取扱いには注意してください。

<エタノールの検出(ヨードホルム反応)>
4−1 2本の試験管に,メタノールとエタノールをそれぞれ5滴程度とり,ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液をそれぞれ1mLずつ加える。
4−2 よく混ぜた後,50℃程度の湯につける。
4−3 6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を1滴加え,よく振る。溶液がふたたび褐色になれば,さらに水酸化ナトリウム水溶液を1滴加える。溶液が濁るまでこの操作を繰り返す。液が濁れば,しばらく静置し,沈殿の色とにおいを調べる。

 
 
 エタノールの方は,ヨードホルムCHIが沈殿しましたね。ヨードホルムの沈殿は黄色で,特異臭がします。このヨードホルムができる反応をヨードホルム反応といいます。エタノールではヨードホルム反応を示しますが,メタノールでは示しません。ヨードホルム反応は,メチルケトン類の検出に使われまが,詳しいことはケトンのところで説明しましょう。ここでは,エタノールの検出方法の1つであると理解しておいて下さい。
 実験結果を確認しましょう。
 
名称 エタノール 1-プロパノール 1-ブタノール
示性式 CHCHOH CHCHCHOH CHCHCHCHOH
無色 無色 無色
におい
水への溶解性 可溶 可溶 少し溶ける
 アルコールは水ほど激しくありませんが,ナトリウムと反応し水素を発生します。また,エタノールはヨードホルム反応を示し,黄色で特異臭のヨードホルムが沈殿します。メタノールはヨードホルム反応を示しません。
 それでは,考察です。

 水に対する溶解度に差が見られたのは,
アルコールは,炭化水素基(疎水基)とヒドロキシ基(親水基)からなっている。ヒドロキシ基は,水分子と水素結合して水に溶け込もうとする。一方,炭化水素基は,水に溶解しないようにはたらく。したがって,炭素数の大きいアルコールでは炭化水素基の作用が強くなり,水に溶けにくくなる。
 Naとの反応の激しさに差が見られたのは,
水の方がアルコールより常温で電離度が大きく,ナトリウムと激しく反応する。アルコールは,アルキル基の部分が小さいほど電離度が大きいので,反応性が大きくなる。
 水とNaの反応やエタノールとNaの反応を化学反応式で示すと,
2H
O+2Na→2NaOH+H
2COH+2Na→2CONa+H
 操作4-3で見られた反応は,
ヨードホルム反応という。



 アルコールの水への溶解性
1-ブタノールを境にして,直鎖の炭素数の大きいアルコールは水に溶けにくい。1-ブタノールの水への溶解度は7.36g/水100gである。1-ペンタノールの溶解度は微量である。

 ヨードホルム反応
 ヨードホルム反応を示すのは,CHCO-(アセチル基)をもつアセトアルデヒドやアセトン,酸化されてアセチル基になるCHCH(OH)-の構造をもつエタノールや2-プロパノールなどである。鋭敏な反応で,エタノールやアセトンの検出に用いられる。
 アルコールの性質は,ヒドロキシ基−OHによるものです。このヒドロキシ基が,水への溶解性,ナトリウムとの反応などに関係しています。
  
 この章の実験のポイントは,次の通りです。
確認しよう
1.メタノール,エタノール,1-プロパノールは水によく溶けますが,1-ブタノールはあまり溶けません。
2.エタノール,1-ブタノールともにナトリウムと反応します。反応の激しさは,水>エタノール>1-ブタノールの順になります。
3.エタノールは,ヨードホルム反応が見られます。エタノール以外に,アセチル基をもつアセトアルデヒドやアセトン,酸化されてアセチル基になるCHCH(OH)-の構造をもつ2-プロパノールなども,ヨードホルム反応が見られます。