08ko-084 第84章 芳香族アミン
 この章では,アニリンの学習が中心です。
 
 アニリンは塩基です。一方,フェノールや安息香酸,サリチル酸などは酸でした。芳香族化合物は,ベンゼン環の置換基によって性質が変わることに注目してください。
思えているかな?
1.酸や塩基とは何ですか?
アレーニウスの酸・塩基…酸とは,水溶液中で電離して水素イオン(オキソニウムイオンH)を生じる物質であり,塩基とは,水溶液中で電離して水酸化物イオンを生じる物質である。
ブレンステッド・ローリーの酸・塩基…酸とは,水素イオン(プロトンH)を相手に与える物質のことをいい,塩基とは,水素イオン(プロトンH)を受け取る物質のことをいう。
2.酸の強さの順を答えなさい。
塩酸・硫酸>スルホン酸>カルボン酸>炭酸>フェノール類
塩酸,硫酸,スルホン酸は強酸であり,カルボン酸,炭酸,フェノール類は弱酸である。  
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)アミン
(2)アニリンの合成
(3)アニリンの性質
(4)アセチル化
 まず最初は,アミンについてです。

第84章 芳香族アミン
(1)アミン
 アンモニアNHの水素原子を炭化水素基で置換した化合物
 芳香族アミン…アニリンC-NH など
 脂肪族アミン…メチルアミンCHNH など
 弱塩基性を示す
 R-NH + HO ⇔ R-NH + OH
 酸と反応して塩をつくる
 R-NH + HCl → R-NHCl
 塩に強塩基を加えるとアミンが遊離
 R-NHCl NaOH R-NH NaCl
 強酸・弱塩基の塩 強塩基 弱塩基 強酸・強塩基の塩

アニリン メチルアミン
 次は,アニリンの合成について考えてみましょう。ニトロベンゼンを還元するとアニリンになります。ニトロベンゼンは,どのようにして合成するか覚えているでしょうね。ベンゼンに混酸(濃硝酸と濃硫酸の混合物)を加えると,ニトロニウムイオンNOが求電子置換反応するのでしたね。
    

(2)アニリンの合成
 ニトロベンゼンのニトロ基を還元
 還元剤の半反応式; Sn 4HCl SnCl 4H 4e
 酸化剤の半反応式; -NO HCl 6H 6e -NHCl 2H
 化学反応式; 2C-NO 3Sn 14HCl 2C-NHCl + 3SnCl 4H
 強塩基を加えると
 C-NHCl+NaOH→C-NH+NaCl+H


ニトロベンゼン アニリン
 スズの酸化数は0から+4に変化していますね。酸化数が増加しています。また,ニトロベンゼンの窒素原子の酸化数は+3で,アニリンの窒素原子の酸化数は−3です。酸化数は減少していますね。スズ原子は酸化され,窒素原子は還元されているのです。
 それでは,アニリンの性質を紹介しましょう。アニリンは無色の液体ですが,空気中に放置すると,徐々に酸化されて褐色になります。実験で使うアニリンも褐色です。また,さらし粉水溶液で赤紫色になり,硫酸酸性の二クロム酸カリウムと反応すると黒色物質(アニリンブラック)になります。アニリンは酸化されやすい物質なのです。

(3)アニリンの性質
 塩基としての強さ
 C-NH<NH<CHNH
 アニリンの水溶液は塩基性
 C-NH + HO ⇔ C-NH + OH
 酸と反応して塩をつくる
 C-NH + HCl → C-NHCl
 アニリン塩酸塩に強塩基を加えるとアニリンが遊離する
 C-NHCl NaOH -NH NaCl
 強酸・弱塩基の塩 強塩基 弱塩基 強酸・強塩基の塩
 アニリンは無色→空気中に放置すると酸化されて褐色
 さらし粉水溶液を加える→赤紫色
 二クロム酸カリウムの硫酸酸性液を加える→アニリンブラック

 解熱鎮痛剤のアスピリンを覚えていますね。サリチル酸に無水酢酸を作用させると,ヒドロキシル基の部分が反応してアセチルサリチル酸になりました。また,アセチルサリチル酸分子中の基CHCO-をアセチル基といい,アセチル基をもつ化合物をつくる反応を,アセチル化といいます。
 アニリンに酢酸を加えて熱し縮合させるか,無水酢酸でアセチル化すると,アミドの一種であるアセトアニリドが生じます。アセトアニリドは医薬品に用いられていました。-ヒドロキシアミンをアセチル化すると,アセトアミノフェンになります。これは,小児用バファリンなどに使用されています。ちなみに成人用バファリンの主成分はアセチルサリチル酸です。
      

(4)アセチル化 
 ヒドロキシル基-OHやアミノ基-NHのH原子をアセチル基CHCO−で置換すること
 C-NH CHCOOH -NHCOCH
 C-NH (CHCO) -NHCOCH CHCOOH
アセトアニリド
 −NH−CO− アミド結合
 アミド結合をもつ化合物→
アミド


アセトアニリド アセトアミノフェン
 それでは,この章の学習内容を確認しましょう。
確認しよう
1.アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物を何といいますか?
2.ベンゼンからアニリンを合成する方法を説明しなさい。
3.アニリンは水にはわずかにしか溶けませんが,水溶液は何性を示しますか?
4.アニリン塩酸塩をアニリンにもどすには,どのような方法がありますか?
5.アニリンにさらし粉水溶液を加えると,何色になりますか?
6.アニリンに二クロム酸カリウムの硫酸水溶液を加えると,何ができますか?
7.アニリンからアセトアニリドを合成する方法を説明しなさい。
8.−NH−CO−結合を何といいますか?


1.アミン
2.ベンゼンに混酸を作用させてニトロ化し,ニトロベンゼンをつくる。ニトロベンゼンをスズを使って還元し,アニリンをつくる。
3.塩基性
4.アニリンより強い塩基,例えば水酸化ナトリウムの水溶液を加えると,アニリンが遊離する。
5.赤紫色
6.アニリンブラック
7.アニリンに酢酸を加えて熱し縮合させるか,無水酢酸を使ってアセチル化するとアセトアニリドが合成できる。
8.アミド結合